研究課題/領域番号 |
26630405
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山添 誠司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40510243)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 振動触媒 / 圧電材料 / 触媒 / 振動発生装置 / ペロブスカイト |
研究実績の概要 |
平成26年度では振動エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換する圧電膜を選定した.また,振動触媒を行うための触媒反応システムを開発し,実際に試運転を行った. 1.振動触媒用圧電膜の開発 共振周波数が200-1000 Hz程度の圧電膜基板の作製および選定を行った.市販のものでは共振周波数が200-500 Hzである,金属板上にPb(Zr,Ti)O3(PZT)膜がのった基板を購入した.基板の長さにより共振周波数がことなり,25 mmおよび50 mmのものを購入した.表面には銀電極が塗られており,分極処理がされていると思われる.また,セラミックスのPZT素子の触媒応用も視野に入れるために,長さが20-30 mm厚さが0.5-1.0 mmのPZT素子も作製した.こちらについては銀電極を表面に湿布して分極処理したものと,電極を湿布していないものを用意した.圧電定数d33が500 pC/N程度の良質な圧電セラミックスであることを確認した.現在,ファンクションジェネレータと振動発生装置を用いて共振周波数を調べているところである.また,スピンコーティングによる金属基板上へのPZT薄膜の作製にも取り組んでいる. 2.振動触媒反応システムの開発 圧電膜基板を目的の振動数で振動させるとともに,触媒反応を行える触媒反応システムの開発を行った.振動装置としてはエミック社製の振動発生装置を用いた.触媒反応にはアルミ製の容器を採用し,ガスの導入・排気口をとりつけた.また触媒を固定するための治具を反応容器内に取り付けた.総重量は2 kgであり,装置の限界重量である3 kg以内に収まった.すでに試運転も行っており,100-500 Hzの範囲で正常に装置が振動することを確かめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では100-1000 Hzに共振周波数を持つ圧電素子の開発・選定,振動触媒反応システムの開発,テスト反応を行う予定であった.これまでの研究で市販の圧電素子を選定し,また,圧電セラミックスの開発を行った.また,金属基板上へのPZT圧電薄膜の作製にも着手している.さらに,振動触媒反応ようの反応システムを開発し,装置自体が問題なく動くことを確認しており,当初の目的をほぼ達成している.しかし,触媒反応のテスト反応までは出来ていない.現在,開発した振動触媒反応装置をもちいて作製した圧電素子の実際の共振周波数を調べている段階である.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度では前年度に開発した振動触媒反応装置を用いて実際に振動触媒性能を評価する.電極の有無,分極の有無や振動周波数により触媒性がかわることが予想される.これら基礎的な研究を行い,振動触媒の礎を築く. 1.電極・分極が触媒性能に与える影響 圧電材料を分極することでその圧電特性を最大限に引き出すことが出来る.分極をするには一般的に電極をつける必要がある.そこで,これら電極や分極が触媒性能に与える影響を詳細に調べる.特に活性サイトとして電極が機能するのか,それとも圧電体表面が活性サイトとなるかは触媒反応活性を向上させる上で非常に重要である. 2.振動周波数が触媒作用に与える影響 振動素子は共振周波数の振動が与えられた時に最も電圧が生じる.本研究ではこの発生する電圧が触媒作用のドライビングフォースになると考えている.そこで,触媒反応に対する振動周波数依存性を調べ,生じる電圧と触媒活性との関係を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請内容に従い,研究を進め,必要な備品や消耗品を計画的に購入した.その結果,僅かであるが,次年度使用額が生じた.これは事前の見積もりに比べ,購入した振動発生装置と触媒反応システムの費用が少し安くなったことに起因している.触媒反応システムについては触媒反応試験を行って不具合を調査して,より効率の良い反応システムの開発を次年度も引き続き行う予定であり,そのために残予算を次年度に繰り越すことにした.
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次年度使用額の使用計画 |
触媒反応システムの反応セルについて現在は圧電素子が20-30 mm程度のものをセットできるようにしているが,共振周波数の関係から,より長い圧電素子を反応容器内に入れる必要性がうまれると考えている.そこで,残予算はこの反応容器の改良のための費用にする計画である.
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