研究課題/領域番号 |
26630407
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
稲垣 怜史 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90367037)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 規則性多孔質材料 / エネルギー貯蔵 / 炭素材料 / 触媒作用 |
研究実績の概要 |
本研究では,規則性メソ孔を保持したまま,金属触媒作用によって規則性メソポーラスカーボンのpartial graphitizationを実現するための最適な調製条件を探索し,グラファイト・ドメインと規則性メソ孔の階層構造を制御した多孔質炭素材料「エネルギーストレージ・カーボン」の調製法の開発を進めている。 Fe,Co,Niの3種の元素を触媒成分として規則性メソポーラスカーボンのpartial graphitizationを試みたところ,Feが最も効果的であることがわかった。ただしFeではグラファイト・ドメインが発達しすぎる傾向にあり,規則的なメソ孔構造が損なわれることも見出された。一方,Co,Niではpartial graphitizationの効果はFeより劣るものの,規則的なメソ孔構造は比較的安定に保つことができた。 得られた多孔質炭素体を電極としたEDLC試験では,Fe,Co,Niいずれの触媒を用いた系でも触媒を用いずに調製した炭素体に比べて高い充放電容量を示すことを見出した。これはpartial graphitizationが起こっている炭素壁部位が何らかの役割を果たしているものと推測しているが,今後,詳細な検討が必要である。 また触媒成分を加える方法を2通り,検討した。すなわち,(1) 鋳型となるメソポーラスシリカ調製時にシリカ原料とともに触媒金属成分を塩として添加する手法,(2) メソポーラスシリカに後から金属成分を含浸担持する手法,である。調製した多孔質炭素体はいずれもpartial graphitizationが進んだが(2)の手法で調製した炭素体の方が高いEDLC容量を示すことを見出した。この挙動の解明についても引き続き検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fe,Co,Niの3種の元素を触媒成分として規則性メソポーラスカーボンのpartial graphitizationを試みたところ,触媒添加による正の効果,すなわちEDLC容量の向上がみられたことから萌芽的な研究として進捗が見られたと考えている。 また触媒成分の添加によって炭化温度を800℃から700℃に下げることができることも見出したので,副次的な発見もあり,触媒能を引き出すための方策を調べる手がかりを見つけることができたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
得られた多孔質炭素体を電極としたEDLC試験では,Fe,Co,Niいずれの触媒を用いた系でも触媒を用いずに調製した炭素体に比べて高い充放電容量を示すことを見出した。これはpartial graphitizationが起こっている炭素壁部位が何らかの役割を果たしているものと推測しているが,今後,詳細な検討が必要である。 この点の解明については透過型電子顕微鏡による構造の観察を進めるともに,得られた炭素体の電気化学的な特性を網羅的に調査する。たとえばインピーダンス測定による炭素体自身の抵抗,メソ孔内での物質移動抵抗,炭素粒子同士の粒界抵抗などの解析を行う。 一方,partial graphitizationが起こる触媒作用についても,炭化処理時に生じるフラグメント成分の熱履歴を観測することでpartial graphitizationを効果的に進めるための触媒調製手法の検討も進める。
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