研究課題/領域番号 |
26630408
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
薩摩 篤 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00215758)
|
研究分担者 |
大山 順也 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50611597)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 燃料電池電極 / 酸素還元反応 / アルカリ交換膜型 / 酸化ニッケル / 酸化コバルト / 酸化数 / 複合効果 |
研究実績の概要 |
アルカリ交換膜型燃料電池は電極触媒が腐食されにくいため、電極触媒に高価な白金以外の金属が使用可能である。元素選択の自由度を生かして、非白金材料によるアニオン交換膜型燃料電池用の高効率な電極触媒を開発し、従来の白金触媒を超える電極触媒の設計指針を提示することが、本研究の目標である。平成26年度は、(1)卑金属酸化物の単セル試験スクリーニングにおいて最大性を示したNi酸化物の酸化状態とカソード上での酸素還元反応(ORR)活性の関係解明、(2)岩塩型構造を有するCoO上での酸素還元反応における卑金属複合効果を検討した。 (1)ニッケル酸化物の組成を変化させたときのNiの酸化還元電位およびORR活性の変化について検討した。その結果、Ni K殻XASからO/Niが小さくなるにつれてNi-Ni間距離が長くなり、O/Niの組成が小さくなるにつれてNiの酸化還元電位が高くなることが明らかになった。Ni酸化物の表面積あたりのORR活性は、酸化還元電位が高くなるにつれて向上した。O/Ni組成を変化させることで、構造(Ni-Ni距離)が変化し、酸化還元電位、ORRに対する表面積あたりの触媒活性が変化することが示された。Ni2+の生成がORRの鍵であると考えられた。 (2)Co酸化物において、研究例の少ない岩塩型構造を有するCoOにおいて卑金属との複合効果を検討した。Co-Mn複合酸化物が最も高いORR活性を示した。ORR活性はモル分率が0.50のCo-Mn複合酸化物が最も高かった。Co K殻およびMn K殻XAFS分光法により、Co-Mnが高い触媒活性を示した要因が、複合酸化物中のカチオン欠陥あるいはMn3+イオンの存在であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では(0)卑金属触媒のスクリーニング、(1)粒子径効果(H26年度)、(2)酸化状態の効果(H27年度)、(3)電極構造の最適化(H27年度)を目標として掲げた。(0)によりNi酸化物を主なターゲットとして(1)以下を実施することとした。(1)には担体(カーボン)との相互作用が含まれることから、シンプルな系 (2)を前倒しで実施した。H27年度は(1)粒子径効果に担体効果を加味して検討し、(3)の電極構造の最適化に繋げる予定である。実施時期の入替はあったものの、概ね計画通りのペースで進行している。また、Ni酸化物における粒径効果・担体効果に関する実験は既に開始している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の目標として、Ni酸化物の触媒粒子径と電極活性の関係を明らかにする。この実験では、電極材料の粒子径を自在に制御することが鍵となる。粒子径は調製法、調製条件により制御すする予定であるが、この操作は担体であるカーボンとの相互作用にも影響するため、担体効果も併せて検討する。調製法としては、通常の含浸法、フリーズドドライ、低温での固相合成、in-situ 金属ナノ粒子合成などを試みる。このようにして得られた、電極材料の酸化状態効果、粒子径効果、担体効果に関する知見をベースにして、更なる最適化設計のための指針を明らかにする。 また、カソード上での酸素還元反応だけでは片手落ちであり、アノード電極上で進行する水素還元反応においても非白金触媒材料の提案が必要である。本研究立案時に有効性を見いだしていたRuをベースに、種々の遷移金属から成るバイメタルナノ粒子を検討したところ、Ru-Ir触媒が高い触媒活性を示すことを見出した。本年度はこの触媒系についても構造や活性促進の機構について検討する。
|