研究課題
可溶性メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO)はメタン資化細菌に含まれる可溶性の酸化酵素である。メタンはそのC-H結合エネルギーが104 kcal/molと大きく、また双極子モーメントがゼロである為に、C-H結合の切断による酸化反応が最も困難なアルカンである。sMMOはこのメタンを高速高効率的にメタノールへ一原子酸素化する酵素であり、その活性中心には二核鉄を持つ非ヘム二核鉄酸化酵素である。しかし、sMMOは複雑な構造を持つ複合タンパク質であり、これを触媒系で再現することは非常に困難であり、sMMOそのものを触媒として用いる酸化システムの開発は限界がある。そこでsMMOの配位環境を模倣した低分子量のモデル化合物を用いた研究が行われてきた。本研究では、sMMOの活性中心に存在するカルボキシラトリッチな配位環境に注目し、カルボキシラト基を持つ二核化配位子を用いて二核鉄錯体を開発した。これらの錯体を触媒として用いて、m-CPBAを酸化剤とするアルカン類の酸化反応を検討した。これにより、カルボキシラトリッチな配位環境を持つ二核鉄錯体は、様々なアルカンの水酸化反応に対して高い酸化活性を示すことが明らかになった。また本研究によって配位子に導入したアルキル置換基の疎水性が高い程、アルカンの水酸化活性が高いことが明らかになった。このことからカルボン酸含有二核鉄錯体はアルカンの水酸化反応において高い触媒能力を示すといえる。また導入した側鎖アルキル基の疎水性が高い触媒活性に不可欠であるといえる。側鎖アルキル基の疎水性が高いほど基質との親和性が上がり、錯体が基質に近づきやすい環境になったことが高い触媒活性の理由だと考えられる。以上のことより、側鎖に疎水性アルキル基を持つカルボン酸含有二核鉄錯体はm-CPBAを酸化剤としたアルカンの水酸化反応において高い触媒能力を持つことが明らかになった。
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Angewandte Chemie International Edition
巻: in press
Chemistry-A European Journal
巻: 22 ページ: 5924-5936
10.1002/chem.201600048
www1.doshisha.ac.jp