本研究は微小空間にシアノバクテリアを閉じ込めることにより、シアノバクテリアの分裂・肥大抑制を行い、植物細胞内の葉緑体がそうであるように、分裂・肥大を抑制したシアノバクテリアが脂肪酸を放出するように環境適応するかを確認するものである。 マイクロピラーアレイを用いてシアノバクテリアの分裂・肥大を抑制することは実現した。シアノバクテリアの大きさと同じくらいのマイクロピラーアレイの間隙にシアノバクテリアを閉じ込めたところ、シアノバクテリアの分裂・肥大は停止したが、シアノバクテリアは死亡しないことが確認できた。そこで、マイクロピラーアレイのスケールアップを試みたところ歩留まりが悪く、多数のシアノバクテリアを微小空間に閉じ込めることが難しかった。 また、遺伝子操作したシアノバクテリアが放出する脂肪酸であるパルミチン酸の検出において、1)染色法、2)分光法、3)質量分析法を試してみた。染色法においては、当初予定したズダンブラックはパルミチン酸を多少黒く染めることができたが、その細胞毒性や感度の低さから、パルミチン酸の検出には不向きであった。また、中性脂肪に結合して赤い蛍光を発するNile Redは、トリグリセリドの3分岐の構造に結合することとPDMSのもつ自家蛍光と重なってしまうため、パルミチン酸の検出に不向きであることがわかった。分光法として、顕微ラマン分光を行ったが、パルミチン酸のスペクトルにおいてパルミチン酸由来のピークを確認できず、パルミチン酸の検出に不向きであると判断した。質量分析装置を用いてパルミチン酸の検出、培養液内の検出を行ったところパルミチン酸を検出することができた。以上により、パルミチン酸の検出には質量分析が適していると判断した。 これらの知見を元に、マイクロピラーアレイにシアノバクテリアを閉じ込めた際に、脂肪酸が放出されているのか否かについて、確認を行う予定である。
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