研究課題/領域番号 |
26630426
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀 克敏 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50302956)
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研究分担者 |
松浦 友亮 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50362653)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノバイオ / バイオテクノロジー / 蛋白質 |
研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者らが高付着性細菌Acinetobacter sp.Tol 5細胞上に発見した付着性バクテリオナノファイバーの遺伝子をリポソーム内で発現させ、リポソーム表面からナノファイバー蛋白質を生やすことにより被毛リポソームを創製することを目的とする。直径約5nm、長さ約250nmのこのナノファイバーは、新規の自己分泌型接着蛋白質(TAA)である(AtaAと命名)。無細胞蛋白質合成系をリポソーム内に組み込み、膜蛋白質のリポソーム表層提示型を開発している研究者と共同で、リポソームに導入したAtaA遺伝子から蛋白質を合成し、AtaAのセルフアッセンブリー機構を利用して、細胞表層同様にリポソーム表層にAtaAファイバーを形成させる。機能性の毛で覆われたリポソームを世界に先駆けて創製することを目的としている。 26年度は、下記の検討を行った。 1.縮小版AtaAの設計、構築:3630アミノ酸からなるポリペプチドのホモ三量体である全長のAtaAファイバーをリポソーム上に生やすことは、分泌やフォールディングにおいて困難が想定された。そこで、リポソームの表層提示に適した縮小版AtaAを設計、構築することとした。検討の結果、接着能力はないが、正しくフォールディングされたファイバーを形成する縮小型として、カルボキシル末端よりヘッド-ストークから成るIFD-CPSDが、まずはリポソームから生やすのに適しているとの見極めに至った。 2.無細胞蛋白質合成系によるAtaA蛋白質の合成:微生物細胞内ではなく無細胞蛋白質合成系(ピュアシステム)で、AtaA縮小版AtaA IFD-CPSDの合成に挑戦した。SDS-PAGEやウェスタンブロットにより、目的蛋白質の合成が確認できた。リポソーム内合成の準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の過程で、全長のAtaAファイバーのフォールディングは、細胞表層においてさえ非常に複雑で難しいことがわかってきた。したがって、たとえリポソーム内でペプチド鎖は合成できても、リポソーム表層にきちんと運搬、表層提示、さらにフォールディングしてファイバー状にアッセンブリーさせることは、困難であろうと想定された。そこで、研究計画を変更し、当初2年目に計画していた縮小版AtaAを先に検討することにした。その結果、26年度はリポソーム表層提示に適した縮小版AtaAの設計と構築に成功した。 そこでこの縮小版AtaAを無細胞合成系で合成することに挑戦し、成功した。本研究の最初の難関である無細胞合成系に成功したことは、リポソーム内合成の準備が整ったことになる。また、この種のタンパク質で無細胞合成系に成功したのは、世界初の実績である。 26年度はリポソーム内でのAtaAファイバーの合成まで進むことはできなかったが、上記の成果と、研究のスケジュールの入れ替えにより進行していることから、進展を自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
リポソーム内での合成とファイバー形成能の検討に、できるだけ早く着手する。実は縮小版AtaAの設計は、計画段階で27年度に検討することになっていたので、その分は26年度に先行実施したことになる。よって、リポソームの表層提示については、課題を先に解決したとも言える。リポソーム内での合成に成功したら、表層提示に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬などの消耗品の購入を少し控え、より研究が進むであろう次年度の消耗品の使用量が増えることが想定されたので先送りをした。研究のスタート段階であったため、他の研究と共通する基本的な試薬を使う機会の方が多かったためでもある。
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次年度使用額の使用計画 |
ピュアシステムやリポソーム調製に使用する試薬量が飛躍的に増えると想定されるので、その購入に当てる。
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