生体内において骨格筋収縮は運動神経に支配されていることから、より正確な薬効評価試験を行うためには、神経に支配された筋組織を用いることが有効であると考えられる。本研究では、「構成要素への選択的な薬剤刺激が可能」かつ「神経細胞のシグナルで動く筋組織の収縮力変化を非接触・非破壊的に定量可能」という特徴を持つオンチップ神経支配筋組織の開発のため、2015年度は以下の項目を実施した。 昨年度開発した、磁気パターニングを利用した共培養マイクロデバイスや培養プロセスの改良を行った。さらに、新たなデバイスの設計・製作を行い、神経軸索を誘導する構造と筋組織を形成する構造を併せ持つマイクロデバイスを開発した。新たに開発したデバイス上で、フィブリンゲルとマトリゲルに混合したマウス株化骨格筋筋芽細胞C2C12を用いて骨格筋組織の構築を行い、電気パルス刺激に応答し、収縮力を発生することを確認した。また、デバイス上で効率よく神経筋接合部の形成を誘導するための検討を行った。神経細胞の初期播種濃度や培養方法の検討、さらにデバイス形状の検討を行った。このように要素技術の開発を進めたことで、目標達成の目途が立ったと考えられる。 また研究開始当初よりマウス神経幹細胞を用いて研究を進めてきたが、研究を進める過程で必要性を感じ、本年度途中より、ヒトiPS細胞由来運動神経細胞の培養の検討を開始した。その結果、ヒトiPS細胞由来の運動神経細胞の誘導に成功した。
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