再生医療・細胞療法において、細胞内への活性型タンパク質導入技術は不可欠である。一般的には遺伝子導入・タンパク質発現のプロセスで行われているが、これは癌化の危険性等が課題である。本研究では、遺伝子導入に代わって、毒性なくタンパク質を機能発現に最適なタイミングで細胞内に導入できる、オイルゲルの開発を目指した。本研究期間で,細胞膜との親和性の高い脂溶性ナノ集合体が分散したオイル表面を利用し、この表面に細胞を接着・伸展させることで効果的なタンパク質導入が可能であるかを検討した。まず,オイルゲル表面での細胞培養を検討したところ,細胞培養は可能であるが回収が困難であることや,細胞の直接観察が困難であることが判明した。そこで,オイル表面での細胞増殖の挙動が確認しやすい油水界面を検討し,不活性液体であり水より比重の大きいパーフルオロカーボン(PFC)に注目し,この液体に脂溶性集合体を分散させ,その表面での細胞培養を行った。結果として,脂溶性界面活性剤の添加を行うことで,良好に細胞が増殖し,また,タンパク質の導入も可能であることが判明した。また,さらに導入効率を向上させるために,脂溶性集合体の拡散性の高い油相を多孔性高分子膜に含浸させた培養足場の利用を検討したところ,PFCに比べ格段にタンパク質の導入効率が向上した。本期間内に細胞の機能化まで評価できなかったが,目標としていた細胞培養とタンパク質導入が可能なオイル表面の構築に成功した。
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