研究実績の概要 |
研究の最終年度となる平成27年度は、光増感反応によって生じた活性酸素種(ROS)による酸化ストレスがラット骨髄由来間葉系幹細胞(rMSC)の分化傾向に対してどのような影響を及ぼすのかということを中心に解析を進めた。ラットの大腿骨より分離したrMSCを増殖培地で継代したものを実験に用いた。光増感反応によるROSの発生は、光増感色素(hematoporphyrin, rhodamine)にLED光源から光を照射することによって生じさせた。過剰な色素量や長い光照射時間はrMSCに細胞死を引き起こしたが、適切な条件設定によって細胞が死滅しない程度に酸化ストレスを与えられる条件を見つけた。細胞増殖培地および骨分化誘導培地中でrMSCに対し酸化ストレスを与え、細胞中の各種分化関連遺伝子群の発現が変化すのかどうかを定量的RT-PCR法により調べた。増殖培地中のrMSCにおいては骨、軟骨、脂肪分化に関わる遺伝子の発現が酸化ストレス応答遺伝子とともに上昇する傾向が見られた。従って、細胞を死滅させない程度の適度な酸化ストレスはMSCの分化を促す方向に制御する可能性が示唆された。
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