研究課題/領域番号 |
26630436
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
竹山 春子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60262234)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ラマン分光 / 生理活性物質 / 非侵襲 / マイクロ流体デバイス / スクリーニング |
研究実績の概要 |
微生物が生産する二次代謝産物は生理活性物質として広く利用されている。しかし、生理活性物質産生菌の獲得には、単離培養法の確立、化合物の抽出精製など幾つもの作業工程を要する。そこで本研究では、環境中の微生物から培養や抽出操作を行わずに、生理活性物質生産能を直接評価する新しいスクリーニング法を提案する。その手法として、マイクロ流体デバイスと顕微ラマン分光法を組み合わせたラマンサイトメーターを開発し、環境中の多様な微生物の生理活性物質生産を非侵襲的に単一細胞レベルで検出する手法を構築する。 本年度は、まず生理活性物質のスペクトルライブラリー構築のため、数十種以上の抗生物質の標品、生体内成分の化合物(アミノ酸、脂肪酸等)についてスペクトル測定を行い、データを蓄積した。今後これらのライブラリーを利用し、有用生理活性物質を生産する環境微生物の推定を進める。また、ラマンサイトメーター開発の前段階として、マイクロドロップレット内に封入した単一微生物内においてラマンスペクトル測定及び生理活性物質検出が可能であることを確認した。さらに、微生物内における生理活性物質生産のin situ検出法の応用として、放線菌及び海洋カイメン共在微生物における抗生物質生産の検出について検証した。使用した顕微ラマン分光計は光学系を最適化し、単一細胞レベルでの空間分解能 (0.3×0.3×2.6 um) とした。本装置を用いることで、Streptomyces avermitilisが生産するoligomycinについて、菌体内における経時的な生産増加や局所的な生産を観測可能であった。また、カイメンから採取した難培養性微生物からも生理活性物質を生産する特定微生物の推定に至った。今後、遺伝子クラスター解析との相関を評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究計画の通りラマンスペクトルライブラリーの構築を行った。当初目標としていた種類を上回る生理活性物質についてラマンスペクトルを取得した。さらに、モデル微生物としてS. avermitilis、カイメン共在微生物を対象として選出し、生理活性物質のスペクトル取得とマイクロドロップレット中への封入等の検討を達成した。研究計画において本年度に行う予定であったラマンサイトメーターの構築については現在検討段階であるが、来年度に行うとしたドロップレット中の環境微生物からのスペクトル取得や単一微生物における遺伝子解析手法についてすでに検討及び一部は達成しているため、全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ドロップレット技術については確立されており、単一微生物を封入しラマンスペクトル測定まで達成できているため、次にマイクロ流体デバイス中のフロー中でのスペクトル取得について検討を行う。精度検証には、測定実績のある培養微生物やカイメン共在微生物を用いる。さらに、生理活性物質の存在が確認された菌体について遺伝子解析を行うことで、本手法の有効性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度における人件費に変動が生じ、調整のため。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度の消耗品購入にあてる。
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