研究課題/領域番号 |
26630438
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
浅井 圭介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40358669)
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研究分担者 |
沼田 大樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20551534)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 低レイノルズ数 / 空気力学 / バイオミメティクス / 感圧塗料 / 流体制御 |
研究実績の概要 |
本研究は,翅脈,セレーション,ミニフラップ,スパイクなど昆虫由来の微細構造の空気力学的な機能を実験で解明し,それに基づく空力制御デバイスを考案することを目的としている.このため昆虫の翅にヒントを得た翼型模型を内圧が百分の一の低密度風洞に入れて実験する.1年目は模型の微細加工法や計測法の開発に加え,感圧塗料や昇華性蛍光物質を用いた可視化法を用いた微細構造模型の風洞実験に着手する.2年目は,翼模型に形成した微細構造の寸法や配置を系統的に変え,それらが翼の失速特性と揚抗比に及ぼす影響を評価する.平成26年度はこのうち,模型微細加工法と新規計測手法の開発,および,微細構造の効果の系統的評価を目的にした研究に取り組んだ.模型加工法の開発については,高精細3Dプリンタによる造形品と加工精度や表面粗さを比較評価した.また,低密度環境で使用する先進計測手法の1つとして,非定常感圧塗料の開発と評価に取り組んだ.これにより,陽極酸化被膜にルテニウム錯体を吸着させた感圧塗料を円柱の風洞試験に適用し,カルマン渦の放出に伴う圧力変動場の画像計測を試みた.一方,低レイノルズ数で有効と考えられる翼型への装着デバイスとして「ミニフラップ」に注目しその形状を系統的に変化させた実験を行った.低速風洞を用いた可視化実験や後流計測を行い,空力特性が改善されるメカニズムの解明に取り組んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
模型の加工法については,高精細3Dプリンタによる造形品と加工精度や表面粗さを比較評価し,3Dプリンターを用いて必要な精度の加工が可能なことを確認した.しかし,エンボス加工等のその他の加工法の検討は未着手であり,次年度に繰り越すこととなった.低密度環境で使用する計測手法のうち,当初の計画で購入を予定していた6分力天秤は揚力と抗力の計測精度要求を同時に満足できないことが判明し,自作する方向に方針を変えた.一方,先端光学計測手法の1つである,非定常感圧塗料の開発に関しては順調に成果を上げることができた.色素の発光寿命が低圧での応答性を決めるファクターであることを明らかにし,これにより,陽極酸化被膜にルテニウム錯体を吸着させた感圧塗料が最適との結論に至った.この塗料を円柱の風洞試験に適用し,カルマン渦の放出に伴う圧力変動場を画像にとらえることに成功した.一方,低レイノルズ数で有効と考えられる翼型への装着デバイスとして「ミニフラップ」に注目しその長さを系統的に変化させた実験を行った.その結果,フラップの装着により翼上下面の剥離域が拡大するのに対し,揚力や揚抗比は改善するという一見矛盾する結果を得た.低速風洞を用いて可視化実験や熱線流速計による後流計測を行った結果,フラップの装着により翼の空力特性が改善するのは,フラップ下端から発生する渦が上面の剥離渦の放出を強化し,翼上面に低圧域が保たれることに起因することが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
模型加工法については,エンボス加工など3Dプリンター以外の加工法についても評価を進める.そのためにも,できるだけ早期に風洞実験に供する模型形状を決定したい.ベースラインの翼型には低レイノルズ数での特性に優れる平板翼か平板円弧翼(キャンバ3%)を選択し,その上に様々な微細加工を施す.模型の翼弦長は25㎜または50㎜を基本とし,風洞の内圧を変えることでレイノルズ数を2000,5000,10000と可変する.基本となる計測は迎角に対する揚力と抗力,およびピッチングモーメントで,失速特性と揚抗比をベースライン模型のデータと比較することでマクロな影響を評価する.突起物や付加物の高さ,スペーシング,また,それらの配置や配向をパラメータとして変えて,失速特性と揚抗比の改善に最も効果を発揮する形態を系統的に調査する.これらの実験には,自作を予定している3分力天秤装置と感圧塗料による可視化を合わせて行い,表面の微細構造やデバイスが与える空力的な影響とその物理的なメカニズムを実験的に評価する.一連の実験で得られた知見に基づき,超低レイノルズ数において流れ場を制御する新しい空力デバイスの提案を目指す.また,乱流格子を用いて主流に強制的に乱れを発生させることで,乱気流中での空力性能についても調査を行う.一連の実験で,超低レイノルズ数環境下において優れた揚抗比と失速特性を有し,乱気流や突風に対しても飛行安定性を維持することのできるデバイスを新規提案することを,本研究の最終的な目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
天秤の必要精度が市販品では出ないことが発注の最終段階で判明し,自作することに大きく方針を変えた.このために風洞試験の実施が遅れている.また,火星大気風洞の内部の気体を排出する真空ポンプに異音が発生,また,圧力を計測する圧力スキャナのポートに異常が見つかるなどのトラブルが発生し,それらの修理に時間がかかったことも遅延の一因である.模型の加工法については,高精細3Dプリンターを用いた模型製作には目途を立てることができたが,圧熱加工など3Dプリンター以外の加工法については着手が遅れている.
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次年度使用額の使用計画 |
天秤の必要精度を満足させるため6つのロードセルからなる天秤を自作する.基本設計はすでに終わり主要パーツは入手済み.今後,荷重を支える構造体と校正用リグを設計・製作し,組み立てと検定を行う.模型の加工法については,高精細3Dプリンターを用いた模型製作に着手すると同時に,予想以上に高い精度が得られた3Dプリンターが圧熱加工の代替として使えないか検討する.それらが済み次第,系統的な風洞実験に着手する.
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