研究実績の概要 |
本研究は,昆虫由来の微細構造の空気力学的な機能を実験で解明し,それに基づく空力制御デバイスを考案することを目的としている.このため昆虫の翅にヒントを得た翼型模型を内圧が百分の一の低密度風洞に入れて実験する.1年目は模型の微細加工法や計測法の開発に加え,感圧塗料や昇華性蛍光物質を用いた可視化法を用いた微細構造模型の風洞実験に着手する.2年目は,翼模型に形成した微細構造の寸法や配置を系統的に変え,それらが翼の失速特性と揚抗比に及ぼす影響を評価する.平成27年度はこのうち,模型微細加工法と新規計測手法の開発,および,微細構造の効果の系統的評価を目的にした研究に取り組んだ.模型加工法の開発については,高精細3Dプリンタによる造形品と加工精度や表面粗さを比較評価した.また,低密度環境で使用する先進計測手法の1つとして,非定常感圧塗料の開発と評価に取り組んだ.これにより,陽極酸化被膜にルテニウム錯体を吸着させた感圧塗料を円柱の風洞試験に適用し,カルマン渦の放出に伴う圧力変動場の画像計測を試みた.一方,低レイノルズ数で有効と考えられる翼型への装着デバイスとして「ミニフラップ」に注目しその形状を系統的に変化させた実験を行った.低速風洞を用いた可視化実験や後流計測を行い,空力特性が改善されるメカニズムの解明に取り組み,剥離せん断層の間欠的な非定常性が揚力の増強に寄与していることを明らかにした.
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