研究課題/領域番号 |
26630441
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
奥野 喜裕 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (10194507)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | MHD発電 / 航空宇宙機 / 電力発生 / ビームエネルギー / エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
本研究では,ビーム(レーザー)支援デトネーションによる高温高圧作動気体を利用する電磁流体力学(MHD)発電に関する原理実証試験,数値シミュレーションによる現象の把握と高性能化指針の明確化を推進し,航空宇宙機搭載用高出力密度電力発生システムの構築に向けての基盤を確立することを目的としている。 該当年度(初年度)は,1) レーザー支援デトネーション波ならびにMHD発電出力の発生に関する原理実証試験,ならびに,2) 数値シミュレーションによるデトネーション波,電磁流体プラズマの挙動把握と実験結果との比較 に焦点を絞り,研究を推進した。 1)「原理実証試験」では,ネオジウム系永久磁石を利用して磁界を印加したアクリル製発電機を真空容器内に設置し,様々な初期充填圧力(アルゴン,ヘリウム:0.01~0.1MPa)の下で,容器外部から発電機向けてCO2 パルスレーザー(出力エネルギー ~1 J, パルス幅 ~1μ 秒)を集光照射して発電実証試験を試みた。特に,① デトネーション波の発生に関しては,高速度カメラによりプラズマの流れを観測し,伝播速度を評価して理論値との比較を行い,デトネーション波としての発生・伝播の確認を行った。また② MHD 発電の基本となる開放電圧を測定し,流体挙動(速度)を評価した。 2)「数値シミュレーション」では,レーザーの作動気体へのエネルギー吸収を考慮し,デトネーション波の成長,伝播を捉えることのできる2 次元非定常電磁流体数値シミュレーションコードを開発し,実証試験でのデトネーション波や開放電圧の発生,挙動に関する理論的裏付けを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の「研究実績の概要」で述べた研究実績は,当初の計画通りであり,それぞれの事項に対して得られた成果を具体的に下記に示す。 1)「原理実証試験」において,① デトネーション波の発生に関して,高速度カメラによりプラズマの流れを観測し,伝播速度を評価して理論値との比較を行った結果,レーザー照射時間の~1μ秒間において伝播速度は4000m/s程度とデトネーション波の理論速度と同程度であること,また② MHD 発電機における開放電圧の測定から,デトネーションで生成された高温高圧の作動気体の流速は,400~600m/sと見積もられ,それは高速度カメラで観測したプラズマの速度とおおむね一致することを確認した。また,連続電極を持つMHD発電機で,電極領域にレーザー光を集光照射した場合,デトネーションで生成された高温高圧の作動気体が上流・下流方向に伝播するので,どちらの流れが支配的になるかにより発電電圧が正・負の発電出力(出力はいずれも正)が得られることなどが判明した。 2)「数値シミュレーション」においては,デトネーション波の成長,伝播を捉えることのできる2 次元非定常電磁流体数値シミュレーションコードを開発し,実証試験でのデトネーション波や開放電圧の発生,挙動に関する理論的裏付けを試み,実験で観測されたデトネーションによる高温高圧の作動気体の挙動や正・負の発電電圧の発生など現象を定性的におおむね再現することができた。ただし,実際の現象は3次元性が顕著であると考えられ,実験値との定量的な議論には更なる検討が必要であるとことが判明した。 以上,所期の目標に達していることから,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(最終年度)は,これまでの研究成果を踏まえて,より具体的な検討を進め,航空宇宙機搭載用高出力密度電力発生システムの構築に向けての基盤を固め,次なる研究開発ステップへの継続・展開に資するものにする。 1)レーザー支援デトネーション(LSD)直接利用,LSD加熱利用(亜音速流れ,超音速流れ)発電機での実証実験と発電特性の把握: LSD直接利用,LSD加熱利用発電機を数値シミュレーションに基づいて設計・制作し,デトネーション波の挙動,発電特性を実験的に明らかにする。特に後者では,MHDチャネル内の超音速流れの実現とそれに伴う発電性能の向上を狙う。なお超音速流れの確認は,チャネル出口でのマッハ角の可視化により行う。 2)数値シミュレーションによる高性能化への指針: 実験結果との比較から電磁流体数値シミュレーションの精度・信頼性を更に高め,発電機形状や運転条件の最適化に向けての指針を明確にし,本方式が持つポテンシャルを定量的に見極める。理想的には準1次元的な挙動が期待できるレーザー入射・デトネーション波の生成が望ましいが,前年度の実証実験では,現象の3次元性が顕著となっていることから,可能な限り3 次元非定常電磁流体数値シミュレーションコードを開発に努め,より精度の高い評価・指針を得ることを目指す。 3)航空宇宙機用電力発生システムの提案(概念設計): 発電機の高性能化とともに,発電システムの提案(概念設計)を行う。作動気体の循環(クローズド)サイクルにおいては,パルスレーザーの繰り返し入力に同期した適切なバルブ操作と軽量コンパクトな輻射冷却機構が必須となる。また,熱電素子励起超電導磁石システムをはじめとして,排熱利用を質量に留意しつつ積極的に採用し,徹底的な高効率化と低比質量化を狙う。
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