研究課題/領域番号 |
26630455
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澤村 淳司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90359670)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 氷海工学 / 流氷 / 平坦氷 / 氷海水槽 / 模擬氷 / 模型船実験 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,高い維持管理費と実験技術を必要とする氷海水槽を用いた氷海域模型船実験に代わる,常温水槽を用いた氷海域模型船実験を可能にする模擬氷の開発である.前年度(H26)の研究成果により,プラスチック材を用いた模擬氷は船と流氷との衝突荷重の計測に有効であることがわかった.しかしながら,プラスチック材模擬氷は1)氷の曲げ破壊が模擬ができない,2)コストが高くなる(氷海水槽と模型氷を用いた従来の実験方法よりはコストは小さい)という問題が明らかになった.これらの研究成果をもとに,本年度(H27)は,プラスチック材模擬氷による流氷中(小片氷が密集する氷海域)の船体抵抗試験を実施し,実氷海中の氷荷重抵抗の算定式と比較することにより,プラスチック材模擬氷による抵抗試験の有効性を示した.さらに,船と氷の衝突荷重に加えて,船と氷の接触による氷の破壊荷重が模擬できる模擬氷の開発を目指し,新たにダミーガラスポリマーを原料とした模擬氷を試作した.ガラスポリマーを使用した模擬氷は形状および材質の不均一性や模擬氷の大規模製造が困難であるなどの問題点はあるものの,氷の曲げ破壊を定性的に模擬できることを確認した.以上のように,H27年度の研究によって,模擬氷を用いた流氷域中での模型船実験を確立することができた.さらに,ガラスポリマーを用いた模擬氷によって,氷の破壊を伴う氷海中の模型船実験の確立の可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の計画時におけるH27年度の研究計画は,「海氷の破壊特性が模擬できる材料を選定し模擬氷を作成すること,そして,模擬氷の材料試験を実施する」ことであった.また,H26年度の研究実績を踏まえたH27年度の研究計画は,「氷破壊のパラメターの調査と氷破壊が模擬できる模擬氷の作成」であった.実際のH27年度の研究は,破壊特性が模擬できる材料としてワックスとガラスポリマーを選定し模擬氷を試作した.また,数値計算と文献調査により,船と平坦氷の衝突時の破壊を模擬するためには,氷破壊モードとして圧壊と曲げ破壊のほかに,新たにSplit破壊が重要であることを明らかにした.さらに,プラスチック材模擬氷を用いる事で,氷の破壊を伴わない流氷中の模型船実験を確立した.しかしながら,ワックスおよびガラスポリマー材模擬氷の材料試験と,氷の曲げ破壊とSplit破壊を伴った模型船実験は未実施となっている.以上のように,H27年度の本研究の進捗状況は,部分的な氷海域ではあるが,本研究の目的である模擬氷を用いた模型船実験の確立は達成できたが,氷の破壊を伴う模擬氷の作成に関しては若干の遅れがある.
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今後の研究の推進方策 |
H27年度の研究により,氷の破壊を伴わない流氷域の模型船実験の確立は達成された.また,船と氷の衝突に伴う氷破壊の重要なパラメータ(破壊モード)が明らかになり,破壊特性が模擬できる材料の選定を行った.そこで,本研究の最終年度であるH28年度は,氷破壊を伴う氷海域模型船実験の確立のため,ワックスおよびガラスポリマー材模擬氷の材料試験の実施と,これら模擬氷を用いた平坦氷中の模型船実験を行う.また,規模の大きな常温水槽での氷海中模型船実験の確立のため,大規模な模擬氷の作成を可能にする簡便な模擬氷の製造方法を考える.以上により,本研究の最終目的である,常温水槽を用いた評価生き模型船実験の確立を実現する.
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度は,まず,H26年度において先行して実施した流氷域中での模型船実験の確立を目指し,H26年度中に作成した模擬氷を使用して検証実験破壊を行い,H27年度に新たに作成する氷の破壊を伴う模擬氷については試作モデルの作成にとどめた.これにより,H27年度に予定していた模擬氷の作成費用が当初予定より少なくなった.
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は模擬氷の作成し模型船実験の実証実験を行う.このため,模擬氷の材料の購入費用に使用する.また,H28年度は本研究の最終年度であることから,成果発表のための論文投稿や旅費に使用する.H27年度から繰り越しされた研究費とH28年度の研究費の多くは模擬氷の作成費用に使用される.
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