船舶建造高品質化・効率化技術の主な柱として期待される,レーザ・アークハイブリッド溶接技術を,我が国の主な建造船種である一般商船の建造に適用するために克服すべき重要課題である,溶接施工前段階での部材拘束を欧州で実践されている大がかりな拘束装置を用いずに実施する方法及び,本研究で検討する手法を用いて製作した溶接継手の健全性を調査した.部材拘束手法としては,我が国の船舶建造工程で通常利用されているアーク溶接継手製作時と同様に適切な間隔での仮付けによる手法を採用することが,実際の建造現場へレーザ・アークハイブリッド溶接を導入するためには必要不可欠である. 本研究では,レーザ・アークハイブリッド溶接装置の構成並びに,実施工時における煩雑な段取りをできる限り省略することを勘案し,アーク溶接部の溶接ワイヤは使用せずレーザのみを照射して点状の仮付け点を適切な間隔で導入する方針を立てた.これについて, 造船所において溶接技術を担当する複数の技術者にヒアリング調査を行った結果,おおむね許容可能な対応であることを確認している. 次に,レーザ単体による点状仮付け点の間隔について,実験に先立ち熱弾塑性FE解析により検討し,妥当な点付間隔を確認した.その後,レーザ・アークハイブリッド溶接の施工条件(溶接速度,レーザ部の焦点合わせ条件・出力・照射角,アーク溶接部の電流・電圧・ワイヤ送給条件等)について,複数回の予備施工を実施して絞り込みを図った.これら予備検討結果を踏まえて仮付け溶接を施工,施工後の溶接部ビード及び断面マクロ観察を実施し,仮付け部には溶接欠陥は存在していないことを確認した.
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