研究課題/領域番号 |
26630468
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
宮川 和也 独立行政法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 幌延深地層研究センター, 研究員 (90721225)
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研究分担者 |
村上 拓馬 独立行政法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 幌延深地層研究センター, 研究員 (30422760)
水野 崇 独立行政法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 幌延深地層研究センター, 研究員 (90421669)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 泥火山 / ESR / 電気探査 / 年代測定 |
研究実績の概要 |
本研究では,電子スピン共鳴(ESR)を用いた年代測定法を,泥火山噴出物に適用することを挑戦的な課題として掲げ,地下水やガスの分析を通して,地下深部のリザーバーの形成プロセスの解明を行うことを目的としている.対象は,北海道北部に位置する上幌延泥火山である. 平成26年度は,上幌延泥火山の泥質堆積物の地下での分布状況を把握するために,電気探査を行った.本研究では比抵抗法を用いた.これは,地層を構成する物質の比抵抗の違いに着目し,人工的に外部から地盤に電流を流し,このとき発生した電位を測定し,地下の地盤状況などを把握する方法である.最初に,沼地を中心として90mの側線を2本,70mの側線を1本測量し,二次元比抵抗探査を行った.結果の解析は,有限要素法を用いた逆解析によって行った.その結果,解析が可能な深度約50m程度まで約5Ωmの低比抵抗の地盤が分布していることが分かった.そこで次に,先の結果の検証も兼ねて,2点において比抵抗法垂直探査を行った.その結果は,概ね二次元探査の結果と整合的であった. なお,電気探査の実施にあたっては,私有地の使用,河川の占用,国有林への入林などの許可申請を適切に行った. 本年度はまた,遊離ガスや地下水の採取・分析を行った.ガスについては,メタンと二酸化炭素の溶存ガス量やそれらの炭素同位体組成,メタンの水素同位体組成の分析を行った.また,地下水中の一般水質分析と微量成分についての分析,酸素・水素同位体組成の分析を行った.その結果,本地域の深度1000m未満の浅部の複数点から得られているガス組成や地下水組成とは異なる結果が得られた.これらの結果は,ガスや地下水もまたより地下深部から湧出していることを示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
物理探査(電気探査)の実施後に,その結果を用いて掘削長20m程度のボーリングを行い,ESR測定用の試料採取を行う予定であった.しかしながら,ボーリングの実施業者の都合により,2014年11月までにボーリングを実施することが出来なかった.12月から翌年の5月頃までは,現場を含め周辺は雪に覆われてしまうため,調査が行えない.そのため,ボーリングによる試料採取については,次年度へ遅らせることとした.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度6月中にボーリングによる試料採取を行い,7月~9月にかけてESR測定を行う.環境放射能の見積もりについては,原位置に線量計を設置することが困難であるため,岩石試料の化学分析によるUやTh,Kの含有量の分析結果を用いて計算によって求めることにする.試料の採取については,試料の産状が全く未定であるため,まずはボーリング試料の観察による柱状図作成をしっかりと行った上で,試料採取箇所を決定する. 採取した泥・砂試料は,化学処理と篩い作業を行い,石英粒子のみを抽出し,さらに粒径ごとのフラクションに分ける予定である.このとき,長石族と石英との分離について,フッ酸を用いた処理を行うと石英粒子表面のα線の影響を被った部分を取り除くことになってしまうため,これを行うことが出来ない.そのため,アイソダイナミックセパレーターを用いて石英と長石族との分離を試みることになるが,基本的にはどちらも磁性を持たない鉱物であるため,難しいことが予想される.事前に練習を行った上で,本番に臨む予定とする. ESR年代測定については,一度にボーリングコア全ての試料に対して行うのではなく,コア観察の結果をもとに,まずは数カ所のみを優先的に行い,その結果を踏まえて,追加で測定する箇所を増やす,という手順を踏むこととする. 最後に,今までの結果をまとめて,国際会議や誌上にて発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
繰り越した金額のほぼ全ては,ボーリングの掘削作業に該当する.平成26年度中にボーリングによる試料採取を行う予定であったが,ボーリング業者の都合により平成26年度11月までにボーリングを行うことが出来なかった.12月から翌年5月頃までは,現場周辺は雪に覆われるため,調査を行うことが難しい.本地域は北海道北部であり,厳冬期の気象は大変厳しく,その中での現場作業は重大な事故につながる恐れがある.そのため,ボーリングによる試料採取を翌年度へ持ち越すことにした.
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次年度使用額の使用計画 |
雪解け後にボーリングによる試料採取を行う.このボーリング作業によって,繰り越した金額の約90%程度を使用する予定である.残りの10%は,今年度の予算と合わせて,ESR測定に必要な消耗品類の購入と,ESR測定に必要な出張旅費に使用する.残りについては,国際会議や誌上における発表のための旅費や英文校正などに使用する予定である.
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