研究課題
将来の超伝導大型トカマク装置では磁束スイングの速度が制限され、印加できる周回電圧が低くなる。外部摂動磁場コイルで形成した閉磁気面を利用して、プラズマ着火・電流立ち上げに必要な周回電圧を低減することを目的とした。ポロイダル磁場がほぼゼロとなる箇所から放電が開始する通常のプラズマ立ち上げでは、初期プラズマが小さいために、電流分布が中心尖塔化して垂直位置不安定性の誘発や縦長断面へ上下に引き伸ばす形状制御が妨げられる。有限な真空磁気面を利用して大きな初期プラズマが生成できれば、プラズマ電流の中心尖塔化を回避できる。研究室に既存の小型トカマクの真空容器外部に摂動磁場コイルを取り付け、垂直磁場コイルと組み合わて閉磁気面を形成できるようにした。ポロイダル磁場コイル電源に用いたIGBT素子が通電中に壊れるのを回避する保護回路を加えて整備し、プラズマ位置のフィードバック制御を調整した。トロイダル磁場コイルの設置誤差に起因する水平誤差磁場が予想より強く、その補正が不十分であったため、外部コイルによる閉磁気面の有・無での周回電圧の変化は明確ではなかったものの、電子サイクロトロン共鳴(ECR)を用いた予備電離がなければトカマク放電が開始しなかったのが、閉磁気面を形成すればECR予備電離無しでプラズマが着火する効果が確認できた。摂動磁場コイルは非軸対称な磁場を生成するが、電流の立ち上げでプラズマによる軸対称磁場が支配的になった時刻で、真空容器内に設置した14本の磁束ループ基づくMHD平衡解析からプラズマ電流分布の中心尖塔化の指標である内部インダクタンスを評価を試みたが、プラズマ電流駆動に用いている鉄芯の磁性体の効果をうまく取り込めていないため、精度よく評価できなかった。また、プラズマ内部に挿入する磁気プローブ列を用いたポロイダル磁場分布計測からのプラズマ電流分布の評価も、今後の課題として残った。
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