平成27年度は,①レーザーアブレーション・プラズマプルームの分光診断,②磁気ノズル効果の検証,③磁気ノズルによるフラックスおよびイオン価数制御の検討,④2次元電磁PICコードによる磁気ノズル中でのプラズマの挙動解析を行うことを目指し,研究を推進した。 ①,②については,レーザーアブレーションにより生成されたプラズマ流の挙動を観測するために,プラズマ分光診断を行った。観測点をレーザー標的表面から1~2cmの位置に固定し,そこを通過するプラズマ流の発光をリレーレンズでモノクロメータに導き,特定のスペクトル線の発光強度の時間変化を追跡することで,プルーム内の原子およびイオンの飛行時間(TOF)分布を得た。前年度に製作したパルス電源によりレーザー標的近傍に置いたシングルターンのコイルに500A程度のパルス電流を流し磁場を発生した。実験に先立ち電磁場解析コードにより磁力線の形状の時間変化を計算し,表皮効果によりレーザー標的(銅)から排除された磁場がノズル的な形状を持つことを確認した。実際にプラズマ流に磁場を印加し,その挙動の変化を調べた。磁場の有無で分光計測から得られた銅原子および銅イオンのTOF分布に若干の違いが見られ,パルス磁場によるプラズマ流の変調を観測した。一方,原子やイオンの十分な加速効果を確認するには至らなかった。これはプラズマ圧に対して磁場強度(磁気圧)が小さいことが原因と考えられるため,磁場増強のためkA級の励磁電流を駆動可能なパルス電源の製作を進めており,より高い磁気圧のもと,③の磁気ノズルによるプラズマ流のフラックスやイオン価数分布の動的制御の可能性について検討を進める準備が整いつつある。一方,④については,2次元ハイブリッド電磁PICコードの開発をほぼ完了し,実験及び数値シミュレーションの両面から高密度プラズマ流の磁気ノズル加速について詳細に検証する準備が整った。
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