研究課題/領域番号 |
26630474
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
徳沢 季彦 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (90311208)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ計測 / ミリ波 / 勾配 / 曲率 / 時空間構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、プラズマの閉じ込めや輸送に大きな影響を与える空間構造の変化すなわち勾配や曲率の詳細な時間変動データを取得し、プラズマ性能に及ぼす空間構造の影響を解明することを目的としている。特にプラズマの電子密度および電子温度の空間分布の勾配及び曲率を直接計測するシステムを開発し、大型ヘリカル装置プラズマにおける実験を通して原理実証を行う。 本年度は、前年度のプラズマ実験において得られた初期データに対する解析手法の開発をまず行った。すなわち、勾配や曲率に比例した信号を得るために、新しく開発を行った2つの計測器システム(電子温度勾配を計測するための局発波周波数掃引型ヘテロダインラジオメータ、および電子密度勾配に関与する情報を得るためのW-band FM-CWミリ波反射計)のデータはいずれも時間的にデータの周波数成分が変動する。その変動する周波数を実時間で数量化することによって、時間変動に伴う空間構造の変化を可視化するのが本研究の目的であるので、そのデジタル回路設計のための基礎データを取得することを試みた。結果としては、まだ信号/雑音比が十分ではないことが明らかになったため、より明瞭な信号を得るための受信光学系を新たに設計・製作しその特性を調べた。それによりこれまでよりも約3倍の信号強度が得られるという予測が得られた。また、高速アナログーデジタル変換器の全体システムを設計・製作した。現在これのデジタル回路出力用のプログラムを製作中である。 これらシステム全体は次年度の大型ヘリカル装置でのプラズマ計測実験に適用する。双方のミリ波計測器の信号からデジタル信号処理を施した時間変動を伴う基準周波数変動量出力、すなわち時空間構造に関する情報を実験的に確認するためのハードウエア準備が整えられたことが本年度の主要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、本年度もプラズマ実験を大型ヘリカル装置で行い、初期データからさらに多くの実験データを取得する予定であったが、装置トラブルによって、実験がキャンセルされてしまったため。一方、この時間を用いて計測システムの性能向上を進めることができたため、次期実験で最終目標に向かって挽回できると考えられ、大幅ではなくわずかな遅れであると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ実験で得られる観測信号をもとに、勾配・曲率に比例した信号を求めるための実時間高速信号処理を行う。そのために250MHzの周波数帯域をもつ高速ADC/DACプログラマブルFPGAボードを適用する。デジタル信号処理システムの設計においては、そのアルゴリズム設計が重要であり、現在これを行っている。初年度に得られた実験データから、このアルゴリズムの確定に寄与する周波数情報などは十分ではないが得られており、予想されたプラズマからの信号成分以外の外来ノイズや多重反射の影響などを除去するデジタルフィルタを作成し、プラズマ実験前にノイズソースを用いて試験する。 テストベンチにおけるプラズマを模擬した開発試験では、周波数掃引速度の最適化や、信号レベルの遠隔調整手法の開発などを施す。その後、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置に適用し、実証試験を実施する。プラズマ実験においては、既設の計測器との比較、特に電子密度・電子温度分布計測器であるトムソン散乱計測器の空間分布測定データとの比較を行い、本方式の特長を明確化する。またプラズマ実験条件によっては、本計測器の適用可能領域に制限が生じることも予想されるが、この適用限界を明確にするということも、本計測器の仕様を確定する上で重要であり、これを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大型ヘリカル装置におけるプラズマ実験を予定していたが、装置トラブルのため次年度に延期した。そのため電気回路部品などの消耗品の購入を差し控えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
大型ヘリカル装置におけるプラズマ実験での本研究の原理実証を行うために、信号レベルや変調周波数の最適化などを施す。その現場適用に際し、必要となる物品を購入し、計画を遂行する。
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