研究課題
本研究では、細胞試料をミクロンの分解能で3次元全元素分析するために、ウエーブガイドを用いてX線検出器の視野を制限し、スライスから発生したX線のみを集光する手法による3次元分布測定法(スライスマップ法)を開発した。スライスマップ法は、通常のマイクロPIXEシステムとX線ウエーブガイドを組み合わせたもので、ウエーブガイドにより、ウエーブガイドと平行な面内から発生したX線のみが検出されるため、ビームの位置が深さ方向の情報を持つ2次元スライスマップが得られる。試料を移動し、各位置での2次元スライスマップを取得することにより、簡単に3次元マップを導出する事が可能となる。実験は東北大学ダイナミトロン実験室のマイクロビーム分析システムにて行った。検出器はSi(Li)検出器で、ビームラインに対して135度方向に取り付け、その前面にウエーブガイドを取り付けた。ウエーブガイドは、Siウエハ製で幅が10マイクロメートル、大きさが10mm×12mmである。臨界角は10keVのX線に対し0.18°程度である。Ti箔からのX線を、ウエーブガイドを通して測定したところ、ウエーブガイドにより視野が制限されていることが分かった。また、ウエーブガイドと試料からの距離を離すことにより、視野範囲が広がり理論通りの働きをしていることが分かった。さらに、厚み5ミクロンのチタン箔を100ミクロンの間隔をあけて設置したものを用意し分析を行った。その結果、前面と後面のTi箔からのX線がウエーブガイドと平行に、別の位置に検出され、深さ方向の情報を得ることができた。深さ分解能はおよそ60マイクロメートル程度であり、X線の吸収により、後面からのX線収量は半分程度に減少してしまうため、空間構造をもち、自己吸収の影響が少ない試料の分析には有効であると考えられる。
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