研究課題
検出素子作成において前年度に生じた超伝導薄膜製膜装置の不具合の改善を進めた。その結果、検出素子の心臓部であるイリジウム/金薄膜の膜質が改善されたばかりか、極低圧アルゴン下での製膜も可能となり、以前よりも良質な膜が得られるようになった。まず薄膜の抵抗値、RRRが低減された。また下地の窒化シリコンメンブレンとの付着力も向上し、リフトオフ法によるパターンニングが可能となった。これにより従来のBCl3ガスを用いたRIE法によるパターニングと比べて、Ir/Au膜の膜厚を容易に厚くすることを可能になるため、検出素子の電気抵抗値の低減、すなわち超伝導温度センサ内における熱伝導率特性の向上が期待される。このIr/Au膜上に金バンプの台座を作成し、超伝導温度センサ部を完成させた。そして、この金バンプ上に10Bの中性子吸収体を搭載固定した検出素子を作成しているところである。なお、これと並行して、中性子が中性子コンバータで吸収され原子核反応によって生じる粒子の検出特性を精査するべく、加速器からのイオンをTESに照射して得られる入射信号の特性について評価した。その結果、エネルギーが2MeV以上の粒子入射に対して、TESの温度上昇が大きく超伝導転移領域を飛び越え一時的に完全に常伝導状態に移行して入射応答パルスは先がつぶれた飽和波形を示すが、その飽和時間を検出することにより、入射粒子のエネルギーを高精度に特定できることを実証した。このような優れたエネルギー弁別特性をベースとして中性子吸収による粒子のエネルギーを精密に検出し、中性子/ガンマ線の正確な弁別を可能にするものと考えらえる。
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IEICE TRANSACTIONS ELECTRONICS, INVITED PAPER
巻: E100-C No.3 ページ: 283, 290
10.1587/transele. E100. C. 283