研究課題/領域番号 |
26630481
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小原 徹 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 教授 (40221858)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 臨界事故 / 燃料デブリ / 東京電力福島第一原子力発電所 / 炉心溶融 / 廃炉 |
研究実績の概要 |
東京電力福島第一原子力発電所の炉心溶融により形成された燃料デブリによる核分裂連鎖反応は現在起きていないと考えられているが、今後燃料デブリの除去作業を行う際に状態の変化により臨界となる懸念がある。安全に除去作業を行うためには、万一臨界となった場合にどの程度のエネルギーと放射線の放出が起こるかを事前に評価しあらかじめ対策を立てておく必要があるが、これまでそのための解析方法は確立されていない。本研究では炉心溶融によって生成された燃料デブリが、状態の変化により臨界となった場合の放出エネルギー及び放射線量を評価する解析手法を確立することを目的としている。 今年度は、すでに開発していた核励起レーザー発振用原子炉の核分裂反応の時間変化を解析する計算コードを燃料デブリが臨界となり核分裂反応が起きた場合の過渡変化の解析に適用できるよう改良を行った。その際、はじめ未臨界だった体系がある時刻に突然超臨界となるステップ状の反応度投入モデルをコードに組み込み、また燃料デブリの膨張及び水の沸騰・放射線分解ガスの発生による反応度投入後のフィードバック効果も必要に応じて取り入れることができるようにした。改良したコードを用いていくつかの模擬体系に対し予備的な解析を行い解析の妥当性を確認した。解析の際には東京工業大学のスーパーコンピューターTSUBAMEを用いたが、コードの改良の際数値計算の並列化に対応できるようにし、解析で効果的に並列化が行われていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたコードの改良は順調に行われ、予備的解析も順調に実施できた。放射線量の評価機能の組み込みは今後行う予定であるが、手法は確立しており問題なく実施できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は改良したコードを用いて、福島第一原子力発電所の現在の原子炉内部を模擬した体系で、燃料デブリの臨界時のエネルギー発生量と放射線量の解析を行う。 事故を起こした原子炉内の状況は今も不明な点が多いが、公表されている情報をもとに炉心の状況を推定し模擬した体系での解析を行う。原子炉内の状況には不確定の要素が多いため、エネルギー放出量と放射線量について考えられうる最大値と最小値を評価する等の方法により、より意義のある知見を得ることに努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析コードの改良を専用のサーバーを導入して行なう予定であったが、予備的解析はスーパーコンピュータTSUBAMEで行うことが可能であることが判明したため平成26年度には導入しなかった。また日程の都合から米国原子力学会等の学会の参加回数が当初予定より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
スーパーコンピュータTUBAMEは予備解析を行うには十分であったが、本解析を行うには状況に応じて柔軟に解析できる専用サーバーの導入が望ましいことが明らかになったため、平成27年度に専用サーバーの導入を図るために使用する。
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