研究実績の概要 |
宇宙や惑星探査のための通信機器と科学機器を搭載した探査機において、特に火星より遠くの惑星探査では太陽光が非常に弱く、これまでPu-238を熱源とする原子力電池が主電源として利用されてきた。しかしプルトニウムという特殊な同位体のため、世界で供給不足が懸念されている。そこでPu-238の代替放射性同位体として、Po-209に着目し、その製造方法について検証を行った。 前年度までに、Po-209の生成経路として、加速器を使用する①Bi-209(p,n)反応、原子炉を使用する②Bi-209(n,γ)Bi-210(β崩壊)Po-210(n,2n)反応の2経路の製造方法について製造効率の解析を行った。その結果、陽子加速器ビーム電流、陽子エネルギーに対する生成効率、原子炉1基当たりの生成率を得た。平成28年度は、この結果もとにPo-209の製造方法検証のために必要な基礎データの検討を行い、実験計画の策定を行った。①の製造方法では、Pb-Biターゲットに対する陽子照射実験の予備解析を行った。重要となるBi-209(p,n)反応断面積及びPo-209生成量の評価を行い、生成量検証実験の条件を明らかとした。また②の方法ではBi-210(n,2n)反応断面積が生成効率に重要である。しかし不安定核Po-210の反応断面積直接測定が困難であることから、原子炉におけるBi-209照射積分実験及びガンマ線測定による検証実験について照射、測定条件を検討した。
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