研究課題
熱電素子の外形が共に斜方体である「斜体素子」を用いて熱効率の良い熱電発電が可能ならしめることを目的とした。このため材料特性の方位依存性、温度依存性と熱収支を考慮した計算機設計を行った。斜体素子の試作とモジュール化を視野に入れ、磁場での利用、熱流体利用などへ応用し熱電発電を企画設計した。斜体素子を並べたモジュールは、結晶方向に強い依存性を持つ材料、および温度依存性を持つ材料に適用できる。最適な熱収支を考えるとモジュールの温度分布は通常のΠ型とは全く異なる。よって計算機支援モジュール設計を行った。まず、異方性の強いBiTe系半導体を例にとってその物性値を信頼できるデータ集から採取した。計算機環境を整備した上で、熱電現象を計算する独自の計算コードを市販有限要素法ソフトFLUENTに組み込んだ。一次元解析解を行い、数値計算の妥当性を確立した。次に等方的な物性値を仮定しつつ温度依存性のみを導入した。一般に熱電半導体の温度依存性は厳しいものが多いのでその効果を直方体素子で試したところ、実はさほど顕著なものではなかった。なお、通常の直方体素子のΠ型結合にあたり、数値計算用メッシュの作成に問題点を見いだし、この回避修正手段を執った。斜体素子モデル格子を作成した。平行四辺形状のメッシュとして熱伝導を検討した。温度場と電場の下で熱電現象を計算し、電流密度を算出し、繰り返し計算によって収束を見た。この結果、温度は連続的段階的に変化するが、電流は最も短いルートを流れることが分かった。斜方形の短辺を電流は優先的に流れるが、熱流束もほぼ同様に流れるため、傾き角度が直角に近いとき、直方体との相違は少ない。傾き角度が60度よりも小さくなると熱起電力はさほど代わらないのに、電気抵抗が大きくなるために素子内部での電力消耗が生じ、外部抵抗を最適に設定しても外部に取り出せる電力は減少した。
1: 当初の計画以上に進展している
直方体に比べ傾けることで電気抵抗が増大する効果が著しいことを見いだした。これを回避するために斜体素子の長辺近傍を切り縮める対策を講じたところ、出力はあまり低減しなくなった。切り落とし方を種々工夫した結果10%程度の出力向上が可能な形を見いだした。このような新規形状素子を当初想定していなかったので極めて興味深い。また、研究を進めたところ、電気抵抗の大きな箇所を単に切り落とすのが良いことが分かった。さらに踏み込んで深く検討し熱放射も検討に含めた。そもそも熱の流れを考え、高温部分を小さく、低温部分を大きく設計した台形素子では電気抵抗の低減効果も小さくなり、輻射で逃げる熱も最小化できて望ましいことに着眼し、台形形状にメッシュを切ったところ、上辺に比べ下辺を2.5倍長くすると直方体に比べ出力を55%以上向上させうることが分かった。輻射の効果が著しいことも計算機実験ならではの新発見である。この切り落とし効果は材料の性能向上が遅々として進まない現状では素子設計上、大きな効果といえる。
1.さらに台形の寸法因子などを調整し、よりよい形を提案したい。2.結晶の方位依存性を計算できるようにして、実験で優秀性が示された斜体素子の原因が形状よりもむしろ結晶異方性にあることを示したい。3.素子を複数個連結したモジュールで、最小の材料使用量、最小の体積占有率、でありながら最大の効率、および最大の発電量を得るための方策を検討する。4.基礎実験を行う。5.磁場の効果を検討する。
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