潜熱蓄熱は、相変化物質(PCM:Phase Change Material)の固液相変化潜熱を利用し、高密度蓄熱・一定温度熱供給が可能なため、未利用熱利用に最適である。しかし、既往の潜熱蓄熱法は長期間の熱貯蔵、輸送が不可能かつ液体状態のPCMで熱貯蔵するため、液体PCM漏出防止のためのカプセル化技術が必須である。そこで、本研究では、ガラス化現象を潜熱蓄熱に応用し、カプセルレス熱輸送を実現する第三世代「ガラス化利用型」潜熱蓄熱技術の創成を目的とした。 H27年度は提案した第三世代ガラス化利用型PCMを利用した低温排熱輸送システムの設計を重点的に実施した。 その結果、熱輸送システムの設計にあたって、PCMのガラス転移温度が高い方が、長期間の貯蔵、長距離の輸送においても安定した操業が可能となった。また、放熱時にガラス転移温度以上にPCMを昇温する必要があるが、太陽熱や低温の排熱などの低エネルギーレベルの熱源を補助熱源として使用することで、エンタルピー、およびエクセルギーの点で、有利な熱回収、熱輸送システムが成立することが明らかとなった。 また、排熱のプロセス内循環を想定した単距離熱輸送システムの設計にあたっては、ガラス化工程と予熱・結晶化(ガラス化解除)工程を、連結させることで、よりエネルギー回収効率の高いシステムを実現できることがわかった。
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