初年度(26年度)はペロブスカイト型鉄系酸化物のSrFeO3正極において,金属マグネシウムを負極,過塩素酸マグネシウムの炭酸プロピレン溶液を電解液としたとき,放電時にペロブスカイト相(P相,SrFeOx(x=2.75~3.0))とブラウンミラーライト相(BM相,SrFeO2.5)の二相共存状態で反応が進むことが明らかとなった.XRDプロファイルのリートベルト解析によってP相とBM相の含有比およびP相の格子定数を決定し,さらに,得られた格子定数から既報データを基にP相の酸化数を求め,BM相の鉄の酸化数を3価として鉄の平均酸化数を決定した.鉄の平均酸化数と放電電気量との関係を基に反応経路を考察した結果,放電初期に過酸化マグネシウムが生成し,その後酸化マグネシウムが生成するという放電反応経路が示唆された.過酸化マグネシウム生成の段階で放電を止めた場合(60~70 mAh/g)には充電も可能であった.最終年度(27年度)にはこの可逆な充放電領域での特性向上を行った.まず,遊星ボールミルを用いてSrFeO3粒子の湿式粉砕を行ったところ,わずかに不純物が生成したが充放電時の分極が低減できた.さらに分極を低減することで過酸化マグネシウムの酸化マグネシウムまでの還元が可逆になると考え,室温よりも高い80℃での検討を行った.このときSrFeO3は電解液である過塩素酸マグネシウムの炭酸プロピレン溶液中で保持しただけでSrFeO2.5まで還元されてしまったため,含水量や溶媒,溶質の検討を行った.その結果,電解液溶媒をトリグライムとすることでこのような還元を抑えることができ、充電も可能となることが明らかとなった.さらなる充放電特性向上に向けて電解液濃度の検討も行った結果,高濃度ほど分極が低減することが明らかとなり,飽和濃度(濃度は未確定,1.5Mから2Mの間)で最も良好な充放電特性が得られた.
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