今年度は本研究の最終年度にあたるため、これまでの研究成果を振り返り、バイオディーゼル合成について、一番プロセスとして実現性が高いと考えられたミストによるバイオディーゼル合成について集中的に実験を進めた。昨年度の装置では、噴霧した液滴が壁面付着を起こすため、反応器の径を太くしこれを削減し、さらに液滴の滞留時間を長くするため、反応器の高さも長くして実験を進めた。その結果、添加率の大幅な上昇が達成された。また転化率の経時変化から、この方法において、反応初期の反応速度が遅く、転化率が上昇すると共に反応速度が上がる傾向が観察された。これは通常の液相バイオディーゼル反応にも見られる現象であり、従って、メタノールのトリオレイン液滴への溶解が影響していると推測された。すなわち、反応が進むにつれてジオレインやモノオレインなどの反応中間体が生成し、これらの中間体がメタノール溶解に効果を示すということである。そしてこれまで3年間で得られた成果を総括し、まず当初想定していた放電の導入は効果が見られる一方で、副生成物の生成のため、プロセス化を考えるとこの導入は適切ではないこと、一方、もう一つの提案であったトリオレインを、固体触媒を含む形で超音波によりミスト化してメタノール中に噴霧する場合には、反応界面の増加や反応温度をメタノールの沸点以上に上げられることから反応速度を大幅に上昇させることができ、この提案の有効性を確認できた。そして本提案法は、バイオディーゼル合成において、常圧下で前例のない高温で高速合成を実現する方法として有望であると結論された。
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