研究課題/領域番号 |
26630498
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 篤 東北工業大学, 工学部, 准教授 (00322686)
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研究分担者 |
丸尾 容子 東北工業大学, 工学部, 教授 (50545845)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エネルギー生成 / レーザ / 光触媒 / 二酸化炭素 / 中赤外 |
研究実績の概要 |
平成26年度の実績に基づき、平成27年度は、レーザの高出力化、光触媒作製条件の確立、レーザ光のガスセルへの導入を行った。レーザ装置開発では、前年度達成できなかった可飽和吸収体によるパルス動作において、平均パワー40mW、デューティー比10%、パルス列全体の長さ約1msのスパイク状バーストパルスの発生に成功した。各スパイクパルスは、高いピークパワーを持っており、その瞬間的な最大値は40W程度に達した。この高ピークパワー動作とは異なる構成により、可飽和吸収体を使用しない疑似連続発振動作もテストし、0.47Wの高平均パワー動作も達成した。この動作でのピークパワーは4Wを超え、また、このパワーレベルはデューティー比10%で1msの間、持続できる。光触媒においては性能の劣化が観測されたため、原因の考察を行った。その結果、触媒作製後の大気保管時間の増加により性能劣化が顕著であることが明らかになり、評価触媒は保管時間を一定として作製後10日以内に評価することとした。また金ナノ粒子の保持量の最適化を行い、メタン生成効率としてアナターゼ結晶において約2μmol/(g×hour)、ルチル結晶において約0.2μmol/(g×hour)の値を得た。しかし寿命においては最適化量ではアナターゼ結晶において1-2時間、ルチル結晶において5時間以上となり、両者それぞれの特性が明らかになった。これらを組み合わせ、目標とする二酸化炭素リサイクルシステムの実験系を構築した。上述したように、レーザ光源は、高ピークパワーと高平均パワーの2通りの動作が可能となり、これらのレーザ照射下でのメタン生成量の比較を行うことにより、レーザ光照射条件の最適化実験に移行できるようになった。さらに、光触媒の作製条件の最適化実験も、今年度構築したこの実験系を用いることにより可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、前年度より単独で開発を進めてきた2umレーザを、紫外線照射下における光触媒反応の実験系に組み込んだ。光照射実験は、紫外光と2umレーザ光の両方をガスセルの入射用窓から同時照射する構成から始めることとした。2umレーザは、高ピークパワーが得られるスパイク状バーストパルスの状態で発振させ用いることとした。紫外光と2umレーザ光を照射し続け、照射の途中でセル内のガスの中赤外領域での吸収特性をFT-IRによりモニタすることにより、ガスセル内の一酸化炭素及びメタンの発生量が増加することが定量的に確認された。2umレーザ光照射の寄与については今後継続して評価を進める。二酸化炭素のマルチパス励起実験については、光触媒に直接2umレーザ光を照射し、触媒表面に接する二酸化炭素を励起する実験を追加したため、最終年度の初めに実施時期を移行することとした。このときに、高平均パワー動作モードでのレーザ照射実験も同時に行う。一方、光触媒の問題としてはTiO2結晶形や金ナノ粒子作製時の溶液pH状態がCO2光還元生成物の生成量やメタンや一酸化炭素の生成比に大きく影響を及ぼすことが明らかになった。また大きな問題として光還元触媒性能が大気保管時間に依存し低下し、さらに光の照射により急激に低下することが明らかになった。結晶形においては結晶構造としては高温で安定であるが、従来光触媒性能が低いとされていたルチル構造のTiO2が安定して還元生成物を生成することが明らかになった。また触媒性能低下の原因としては、酸素欠損の消失が考えられており、アナターゼ及びルチル構造のTiO2表面に生成させた金ナノ粒子との間の酸素欠損を考察すると伴に、触媒性能評価においてはAuナノ粒子/TiO2(ルチル)に重点をおき触媒性能を評価することとした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(平成28年度)の研究推進については、当初の計画通り、二酸化炭素リサイクル技術を利用したメタン生成システムの構築とそのシステム評価を中心に、またそれに必要な今年度からの継続課題についても取り組んでいく。レーザ開発に関連した課題としては、高平均パワー化した疑似連続発振動作でのレーザ照射実験が今年度から最終年度に持ち越しになってしまったため、最終年度前半に早急に実施する。また、2umレーザ照射方法のマルチパス化を最終年度前半までの継続課題として期間を延長することとしたが、これは、最終年度に予定していたメタン生成システムの構築の開始を早め今年度から着手することにより、時間的な調整を図っている。一方、光触媒開発は、条件を変えながら順調に進めてきたが、最終年度は、材料仕様の最適化、安定的な作製技術の確立、メタン生成量の定量評価を進めながら、メタン生成システムへの導入を推進する。最終年度後半は、得られた成果に基づき、提案するメタン生成システムの設計指針について実太陽光利用の観点も含めて検討する。最後に、総括として、成果発表にも注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度光触媒評価用のガスセルの作製を予定していた。このガスセルは光が触媒表面に斜入射で入射する仕様を予定していた。しかし、実験の過程で直入射の方がより望ましいことが推定されたため、直入射のセルを作製することとした。直入射のセルは触媒の固定方法等に特別の仕様を必要とするため、新たな設計が必要となり、作製を次年度に延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
触媒をFT-IR評価を妨害しない方法で固定し、光を直入射できるガスセルの設計、作製を行い、直入射での光触媒評価を行う。また直入射が可能になれば、多重反射による実験も可能になり、より高効率の変換方法を検討できる。
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