研究課題/領域番号 |
26640005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
眞田 佳門 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50431896)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 概日時計 / 筋萎縮性側索硬化症 |
研究実績の概要 |
神経変性疾患は、神経細胞の変性および脱落が徐々に進行する神経疾患であり、運動ニューロンが選択的に変性する筋委縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)などが挙げられる。このような神経変性疾患の多くは難治性であり、根本的な治療法が存在しない。近年、神経細胞の保護を担う分子を人為的に発現もしくは活性化することによって、神経変性疾患のモデル細胞やモデル動物における神経変性を抑制できることが報告されている。私共のこれまでの研究から、概日時計の中枢分子が神経変性疾患における神経変性に対して保護作用を示す可能性が考えられた。そこで本研究では、概日時計の中枢因子であるPeriod2に着目し、神経変性における役割を解析した。培養した大脳皮質神経細胞において、高濃度グルタミン酸(Glu)や過酸化水素などの神経毒暴露に伴って、Period2量が低下することが判明した。神経細胞における、Period2量の低下がどのような役割を果たすのかを調べるため、Period2に対するshRNAを培養神経細胞に導入してPeriod2を発現抑制した。この条件下において、神経細胞をGluに暴露すると、変性する神経細胞の割合が顕著に低下した。逆に、Period2を過剰発現すると、神経細胞はGluに対して脆弱になり、変性する神経細胞の割合は著しく増加した。一方、ALSの細胞モデルにおいも、Period2を発現抑制すると神経変性が促進し、Period2を過剰発現すると、神経変性が抑制された。これらの結果から、Period2量の低下は、種々の神経毒に対して保護作用を示すことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画では、培養神経細胞の神経変性を指標として、Period2の役割を明らかにすることを目標としていた。本年度の研究により、Period2が神経保護機構と強く結びついており、神経細胞は神経毒に曝された場合にPeriod2量を低下し、自己を保護しているという結論に達した。このような理由から、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Period2の発現抑制が生体内においても神経保護作用を示すことを確かめるため、Period2の機能欠損マウスおよび過剰発現マウスを入手した。現在、これらのマウスとALSモデルマウスを交配して2重変異マウスを作製し、Period2量がALS様症状に及ぼす影響を検討している。具体的には、筋萎縮に伴う体重低下、筋力低下、さらに運動ニューロン数の低下を指標として解析を始めている。今後は、これら解析を完成させ、概日時計の中枢分子であるPeriod2が生体内で神経保護機構と連関していることを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用している遺伝子改変マウスの飼育費用(エサ代など)は、飼育頭数により変動する。今年度は、予定よりも飼育頭数が若干少なかったため、今年度は次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度は、マウスの飼育頭数が増えることが予想されるため、エサ代などの飼育費用に充てる予定である。
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