研究課題/領域番号 |
26640009
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
一條 裕之 富山大学, 大学院医学薬学研究 部(医学), 教授 (40272190)
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研究分担者 |
川口 将史 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (30513056)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 外側手綱核 |
研究実績の概要 |
外側手綱核(LHb)の感受性が発達段階依存的に変化する機構を検討するに当たって、これまでに研究されている他の神経回路の感受性が成熟する機構、視覚系の臨界期形成機構、と対応づけて類似性と相違性を詳細に記載する意義が大きいと考え、Perineuronal net(PNN)、GABA作動性抑制性回路の発達、parvalbumin(PV)陽性細胞などの分布を免疫組織化学的に記載した。 その詳細を解析しているところであるが、(1)一部に視覚系の臨界期機構と類似の時間的な出現パターンを示す分子や細胞が認められた。(2)しかしながら、LHb独特の出現パターンを示す分子や細胞が認められた。この結果は、LHbの感受性変化には視覚系の臨界期機構と類似の部分が有る一方で新奇の感受性調節機構があることを示唆しており、臨界期の一般性を考察するために重要である。 これらの基本情報の記載と並行して、エクソンプローブを用いたin situ hybridizationのセットアップを完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PNNとPV陽性細胞の時間的な出現パターンは視覚系の臨界期機構との類似を示した。PNNは生後35日以降に形成され、LHbの感受性と逆相関した。PV陽性細胞の空間的な分布パターンはPNNと類似していた。この結果、LHbの記載が充実し、経験の操作の影響と回路の改変を検出する手段が整った。 他方、GABA作動性抑制性回路の発達を記載したが視覚系との類似性は乏しかった。抗GAD65/67抗体染色を用いてGABA作動性神経細胞体を探索したがLHbにはほとんど存在せず、抗VGAT抗体染色を用いてGABA神経終末を検討したが発生初期から密に分布し、LHbの感受性と相関しなかった。視覚系と異なり、LHbにおいてはPV陽性細胞はGABA作動性ではないと考えられ、GABA作動性神経細胞の遺伝的な改変の意義の再検討と計画の修正に至った。 基本情報の記載と並行して、エクソンプローブを用いたin situ hybridizationのセットアップを完了した。 chondroitinaseABCを用いたPNN分解実験は一年遅れの実施となるが、重要な進展が得られたので、おおよそ順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
PNNとPV陽性細胞の時間的な出現パターンは視覚系の臨界期機構と類似していたので、PNNによる回路の安定化機構とPVの関与に関して視覚系の研究成果を参考に進めることができると考えられる。1)ストレス負荷が最初期遺伝子陽性細胞数(Egr1陽性細胞)、PNNの量、PV陽性細胞数に及ぼす効果を検討し、感受性変化の詳細を比較する。2)chondroitinaseABCを用いたPNN分解がEgr1陽性細胞、PNNの量、PV陽性細胞数に及ぼす効果を検討し、幼弱期または成体期のストレス負荷が及ぼす効果の違いを検討し、臨界期と呼ぶべき期間があるか探索する。2)視覚系の臨界期形成においては転写因子Otx2が神経細胞活動依存的に分泌されPV陽性細胞の分化に深く関わると報告されている。予備実験によって手綱にOtx2陽性細胞が分布することが示唆されたので、その分布を免疫組織化学およびin situ hybridizationを用いて追跡し、PV陽性細胞との関係を二重染色などによって明らかにする。 視覚系の臨界期とは異なったLHbに特有の感受性調節機構を追求するために以下の探索を行う。3)LHbにおいてはPV陽性細胞は非GABA作動性細胞であると考えられるが、その性質は不明である。VGlut等の細胞マーカーを用いた二重染色を行い、PV陽性細胞の性質を探ると共に、視覚系神経回路の臨界期機構との差異を検討する。 さらに、LHb神経細胞の機能を電気生理学的に検討し、細胞体および樹状突起の広がりを形態学的に検討するために、手綱を含む矢状断脳スライス標本を用いた急性実験の準備を始め、最終年度に備える。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の試薬や抗体を他の研究者から譲渡されたものを利用し、消耗品費を節約したため少額の次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに必要となる試薬などの消耗品費に利用する計画である。
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