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2015 年度 実施状況報告書

情動の臨界期?;幼若期のストレス経験が外側手綱核の構造と機能に及ぼす影響の研究

研究課題

研究課題/領域番号 26640009
研究機関富山大学

研究代表者

一條 裕之  富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (40272190)

研究分担者 川口 将史  富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (30513056)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード外側手綱核 / 最初期遺伝子 / 母子分離ストレス / perineuronal net
研究実績の概要

最初期遺伝子の発現を指標にして、軽微なストレス負荷が外側手綱核(LHb)の活動性に及ぼす影響を幼若個体と成体において計測した。ストレス負荷が幼若期のLHbに大きな活動を引き起こし、成体では穏やかな誘導が引き起こし、発達段階依存的に感受性が変化していた。このような感受性変化はLHbにおける情報処理が発達段階によって異なっていることを示し、LHbにおける臨界期の存在を疑わせたので、視覚系の臨界期との類似性を検討した。視覚系の臨界期形成に関与することが知られている細胞マーカー(GAD67、agrecan, WFA lectin染色陽性PNN、Otx2)のLHbにおける発達段階依存的な発現の変化を計測した。LHbにGAD67陽性GABAergic neuronは観察されず、視覚系とは異なっていたが、他のマーカーは発達段階依存的に発現が変化しており、神経回路機能の成熟に関わることが示唆され、視覚系と同様に経験が感受性の成熟に及ぼす影響を検討する意義が確認された。
幼若期の経験の違いがLHbに及ぼす影響を調べるために、幼若期に与えられたストレスが成体LHbの感受性に及ぼす効果を調べた。母子分離ストレスを経験したマウスが成長した後に軽微なストレス負荷を与えた際のLHbの活動を計測すると、コントロールに比して大きな反応が観察された。現時点のデータは幼若期の経験に依存して成体のLHbの感受性が調節されることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「幼若期の経験が外側手綱核の構造と機能に及ぼす影響を検討し、臨界期を検討する」という本研究の目的を達成するための成果を集積しつつある。
(1)本研究で「視覚系の臨界期とLHbの成熟の類似性を記載的に検討すること」を第一段階のゴールとして設定した。これまでに視覚系の臨界期形成に関わることが知られている分子のLHbにおける発現を検討し、類似性と相違性を記載し、第一段階を達成した。LHbにおけるperineuronal net(PNN)の形成は視覚系の臨界期形成に類似しており、感受性変化と逆相関している。これらの記載は(3)に述べる幼若期の経験がLHbの構造に及ぼす影響を検討する際の指標として利用することができる。LHbにGABA作動性抑制性神経細胞はほとんど存在しないが、外来のGABAergic線維がLHbの発達段階依存的感受性変化に寄与する可能性がのこる。
(2)本研究では「幼若期の経験がLHbの機能に及ぼす影響をあきらかにすること」の最終的な第三段階のゴールとして設定した。これまでに幼若期のストレスが成体のLHbの感受性の変化を引き起こし、機能の違いを生むという予備的な結果が得られつつあり、核心を突きつつある。
(3)本研究では「幼若期の経験がLHbの構造に及ぼす影響を明らかにすること」を第三段階のゴールとして設定しているが、まだ結果は得られていない。しかしながら、臨界期形成に関わることが知られている分子のLHbにおける発現の検討を終えたので、この所見を利用して経験がLHbの構造に及ぼす影響を検討する準備は整った。

今後の研究の推進方策

幼若期の経験が外側手綱核の構造と機能に及ぼす影響をさらに検討し、臨界期の証明とその機序の理解に近づく為に、以下の実験を推進する。
(1)母子分離ストレスを経験したマウスが成長した後にもLHbの活動が高く保たれるというこれまでの予備的な観察を確証するために、例数を重ねる。
(2)母子分離ストレスを経験して機能が変更されている成体マウスにおけるLHbの構造が改変を調べる為に、agrecanとWFA lectin染色陽性PNNの形成を検討する。視覚系における臨界期形成に関わることが知られているOtx2の発現に及ぼす影響を検討する。
(3)臨界期の証明とその機序の理解のために、実験的撹乱がLHbの感受性に及ぼす影響を以下の方法で検討する。母子分離ストレスがLHbのPNN形成に及ぼす影響が認められた場合には成体マウスにコンドロイチン硫酸分解酵素の注入し、PNNを破壊した場合のLHbの感受性を検討し、感受性調節におけるPNNの寄与を検討する。GABA作動性神経細胞の効果が減弱しているGAD67EGFPノックインマウスに母子分離ストレスを負荷し、感受性調節においてGABA作動性神経細胞の寄与を検討する。

次年度使用額が生じた理由

富山大学生命科学先端研究支援ユニット(動物実験施設)での2015年12月から2016年3月までの使用料金の請求と支払いが2016年4月に行われるため、この期間のおおよその使用料金分を残した。

次年度使用額の使用計画

次年度使用額を前年度の動物実験施設利用料金に主に充て、残金分を2016年度の物品費に充足する計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Development of the thalamo-dorsal ventricular ridge tract in the Chinese soft-shelled turtle, Pelodiscus sinensis.2015

    • 著者名/発表者名
      Tosa Y, Hirao A, Matsubara I, Kawaguchi M, Fukui M, Kuratani S, Murakami Y.
    • 雑誌名

      Dev. Growth Differ.

      巻: 57 ページ: 40-57

    • DOI

      doi: 10.1111/dgd.12186

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Involvement of Slit-Robo signaling in the development of the posterior commissure and concomitant swimming behavior in Xenopus laevis.2015

    • 著者名/発表者名
      Tosa Y, Tsukano K, Itoyama T, Fukagawa M, Nii Y, Ishikawa R, Suzuki KT, Fukui M, Kawaguchi M, Murakami Y.
    • 雑誌名

      Zoological Lett.

      巻: 1 ページ: 28

    • DOI

      DOI: 10.1186/s40851-015-0029-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Lateralization, maturation, and anteroposterior topography in the lateral habenula revealed by ZIF268/EGR1 immunoreactivity and labeling history of neuronal activity2015

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Ichijo, Masafumi Kawaguchi
    • 学会等名
      第38回日本神経科学大会
    • 発表場所
      神戸コンベンションセンター
    • 年月日
      2015-07-30 – 2015-07-30
  • [学会発表] Neural basis of reproductive isolation in Rhinogobius species2015

    • 著者名/発表者名
      Masafumi Kawaguchi, Koji Matsumoto, Kei Nakayama, Naoyuki Yamamoto, Yasuhisa Akazome, Fumikazu Suto, Hiroyuki Ichijo, Yasunori Murakami
    • 学会等名
      第38回日本神経科学大会
    • 発表場所
      神戸コンベンションセンター
    • 年月日
      2015-07-29 – 2015-07-29

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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