研究実績の概要 |
本研究では、脊椎動物の聴覚の代表的な機能のひとつである聴覚情景分析の神経回路基盤を明らかにするために、ゼブラフィッシュを新たなモデルとして確立することを目的として研究を行った。 聴覚応答が脳のどの部位で起こるのかを脳全体かつ単一細胞レベルの解像度で捉えるために、透明で全脳光学計測が可能であるゼブラフィッシュ仔魚の利点を生かして聴覚応答を計測する光学実験系の確立を目指した。脳全体の神経細胞の蛍光強度測定のためにHoward Hughes Medical Institute's Janelia Research Campusを訪問して二光子励起顕微鏡を用い、神経細胞にカルシウムイオン指示タンパク質を発現する遺伝子組換えゼブラフィッシュ仔魚をアガロースに包埋し、音刺激を与えるプラットフォーム上に固定した。聴神経の一次投射領域である脳幹に注目してカルシウムイメージングを行ったところ、短いパルス音/振動刺激(500 Hz, 2 cycles)に対して両側脳幹の菱脳第一分節の正中線から約40μm側方の細胞群、およびそこから菱脳第5分節の正中線から約20μm側方を経由して後脳後部へ下降する繊維群においてGCaMP6fの一過的な蛍光強度上昇が観察された。蛍光強度変化率ΔF/Fは約50%であり、約1秒後には元の蛍光強度に戻った。異なる刺激強度に対して同様の応答が再現され聴覚応答であることが示唆された。
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