研究課題
恐怖条件付け文脈学習課題を用いて、形成直後の「新しい記憶」と形成後1ヶ月経過した「古い記憶」との性状を比較した。申請者のこれまでの解析から、古い恐怖記憶であろうとも、記憶を想起させる時間を長くすることによって不安定されることが示唆されている。(Suzuki et al. J. Neurosci. 2004)。そこで、この知見に基づいて、恐怖条件付け文脈学習課題を用いて、恐怖条件付け後1日あるいは8週間後に、電気ショックを与えたチャンバーにマウスを3あるいは10分間戻して、恐怖記憶を想起させ、c-fos発現を指標にして海馬の活性化状態を解析した。その結果、1日後に戻した場合にはチャンバーに戻した時間に関わりなく、海馬におけるc-fos発現が認められたのに対して、8週間後に戻した場合には、長時間(10分間)戻した場合にのみ、c-fos発現が誘導されることが初めて明らかとなった。一方、対象として解析した帯状皮質では8週間後にチャンバーに戻した場合にのみc-fos発現が誘導されたことから、8週間後の記憶は「古い」記憶の性状を満たすことが示唆された。従って、海馬依存性を失った古い恐怖記憶であっても、想起時間を長くすることで、海馬依存性が復活することが強く示唆された。さらに、海馬依存性が復活したことを確認するために、海馬不活性化の影響、また、遺伝子発現阻害の影響などの解析を進めた。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに研究が進展しているため。
前年度の解析を継続して行う。特に、細胞・分子レベルの解析として、前年度に継続して、初期応答遺伝子発現とプロテオソーム依存的タンパク質分解の活性化状態を組織免疫染色法により解析する。また、記憶想起に対する海馬不活性化の影響、古い記憶の再固定化に対する遺伝子発現阻害の影響の解析を継続して詳細に解析し、古い記憶想起時に活性化される海馬ニューロンの性状も解析する。代表者の研究室において、in vivoユニット記録を立ち上げ、恐怖記憶想起時の海馬ニューロンの活性化状態を電気生理学的にも解析する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 5件) 備考 (2件) 産業財産権 (1件)
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