研究課題
がん細胞は分子レベルの異常が蓄積することにより発生し、通常、抗腫瘍免疫機構により排除される。しかしながら、がん細胞は抗腫瘍免疫機構をすり抜けることで腫瘍形成し、無秩序に増殖することが臨床上問題となっている。一方、視床下部に存在する pro-opiomelanocortin (POMC) は β-endorphin を産生することで、NK 細胞の活性化やがんの増殖を抑制するなど、抗腫瘍免疫機構に関して重要な役割を担っている可能性が考えられる。これまでの技術進展により、分子遺伝学的手法を応用することにより、視床下部β-エンドルフィン神経をはじめとした、特定脳内ネットワークの ON/OFF 調節により、様々な脳内ネットワーク刺激が全身性の自然免疫•獲得免疫系にどのような経路•場所で影響を及ぼすのか検討することが可能となった。本年度は、視床下部 POMC 神経が末梢の抗腫瘍免疫機構ならびに腫瘍の増殖に与える影響について光遺伝学的手法を用いて検討を行った。光遺伝学的手法に従い、視床下部 POMC 神経を活性化させ、抗腫瘍免疫細胞の細胞分布について検討したところ、抗腫瘍免疫細胞の活性を抑制する MDSC 細胞数の有意な減少が認められた。さらに、MDSC が活性を制御している制御性 T 細胞の細胞数に減少傾向が認められ、NK 細胞の細胞数に有意な増加が認められた。一方、マウス由来肺がん細胞株をマウスの皮下に移植し、光遺伝学的手法により視床下部の POMC 神経を活性化させたところ、腫瘍サイズの有意な減少が認められた。
2: おおむね順調に進展している
本申請に必要なマイクロインジェクション等の技術習得ならびに遺伝子改変動物やAAV ベクター等のマテリアルの入手が比較的速やかに達成することができたため、POMC promoter 下流に光受容性チャネルであるChR2 あるいはeNpHR や DREADD サブタイプである hM3Dq ならびに hM4Di を特異的に発現させることが可能となった。こうした技術を駆使し、担がんモデル動物において、βエンドルフィン含有神経を活性化あるいは抑制することによるがん細胞増殖あるいは免疫系細胞の変化といった表現系に対するフェノミクス解析の実施が可能となった。
今後は、脳内 POMC 神経の活性化が、どのようなメカニズムを介して、抗腫瘍効果を引き起こすのか i) 自律神経・知覚神経を介した影響、ii) 視床下部・下垂体・副腎皮質系を介した影響 iii) サイトカイン・ケモカインを介した影響 iv) エクソソームを介した影響に細分化し検討を行う。また、中脳ドパミン神経系を活性化することによる抗腫瘍効果についても検討していく。オプトジェネティクスあるいは DREADD システムに従い、中脳ドパミン神経系を人為的に活性化ならびに抑制する手法については既に確立しているため、速やかに実験を行えると考える。
H26 年度に納品予定の消耗品が、国内在庫がなく年度内に納品が間に合わなかったため、残額である 8566 円を繰り越すことにした。
H26 年度の残額は、H27 年度分と合わせ、消耗品費として使用する。H26 年度納品できなかった消耗品については、H27 年度に改めて注文を行う。
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すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 1件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 14件、 謝辞記載あり 12件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (2件)
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