研究課題
腫瘍増殖は通常、生体の免疫応答ならびに腫瘍微小環境の均衡により制御される。したがって、外界からのストレス等の全身恒常性機能異常による生体の免疫機構の破綻は、がんの増悪化を引き起こす可能性が示唆される。一方、視床下部は、交感神経・副交感神経活動及び内分泌系の機能調節を担っている。なかでも、視床下部弓状核 pro-opiomelanocortin (POMC) 神経は、一般に摂食行動に関与することが知られているが、内分泌系や自律神経系を介し、生体の免疫応答を制御している可能性が考えられる。昨年度までの研究成果により、光遺伝学的手法を用いた視床下部弓状核 POMC 神経の人為的活性化により、免疫増強ならびに腫瘍増殖を抑制することを明らかにしてきた。本年度は、抗腫瘍免疫に関与する視床下部弓状核 POMC 神経ネットワークの同定およびその抗腫瘍免疫増強効果のメカニズム解析を試みた。薬理遺伝学的手法により、視床下部弓状核 POMC 神経を持続的に活性化したところ、担がんモデルマウスにおける腫瘍増殖の抑制が認められた。この腫瘍増殖抑制効果は、μオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソンの室傍核領域への持続注入により有意な減弱が認められた。従って、視床下部弓状核 POMC 神経の活性化による腫瘍増殖抑制効果は、β-endorphin の遊離による室傍核領域の μオピオイド受容体の活性化を介した効果である可能性が示唆された。このような条件下で、FACS により脾臓における免疫細胞の定量を行ったところ、視床下部弓状核 POMC 神経の活性化によりNK 細胞ならびに NKT 細胞数の有意な増加が認められた。さらに、血漿サイトカイン量の変動について検討を行ったところ、視床下部弓状核 POMC 神経の活性化により、血漿 IFN-γ 量の有意な増加が認められた。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (5件)
YAKUGAKU ZASSHI
巻: 136 ページ: 699-703
10.1248/yakushi.15-00262-3
Stem Cell Reports
巻: 5 ページ: 1-14
10.1016/j.stemcr.2015.10.012.
Trends Neurosci.
巻: 38 ページ: 237-46
10.1016/j.tins.2015.02.001
PLoS One.
巻: 10 ページ: e0123407
10.1371/journal.pone.0123407
Nihon Shinkei Seishin Yakurigaku Zasshi.
巻: 35 ページ: 89-95
Synapse
巻: なし ページ: 21902
10.1002/syn.21902.
Br J Pharmacol
巻: 172 ページ: 268-276
10.1111/bph.12573