ヒト、サル、ネコ等の高等な視覚機能を有する哺乳類の一次視覚野では、類似した視覚反応選択性を持つニューロンが集まって機能コラムを形成しているが、機能コラムの中の神経回路構成については不明な点が多い。私はこれまでに、ラット視覚野切片標本を用いて、その神経回路を電気生理学的に解析し、近接する2/3層錐体細胞(興奮性細胞)はその間に神経結合があると、近傍の渡河の細胞からの興奮性入力を共通して受けることを見出し、微小神経回路が視覚野内に埋め込まれていることを報告した。この微小神経回路網は、情報処理の基本単位と考えられるが、ラットはコラムを有しないため、機能コラムとの対応関係やコラムよりもさらに小さい情報処理単位であるかは不明である。本研究では、コラム構造を持つネコの一次視覚野を対象とし、その中に微小神経回路が存在するかを解析した。まず、in vivo光学測定法により方位選択性コラムを同定し、その場所を蛍光標識した。その個体から作製した視覚野切片標本において、方位選択性コラムの中心にある2/3層錐体細胞間の神経結合を解析した。その結果、方位選択性コラム内で神経結合する2/3層錐体細胞ペアは、同じコラムに属する他の細胞からも共通入力を高い割合で受けていることを見出した。この共通入力は特に2/3層と4層からの入力で高かった。一方、神経結合を形成しない錐体細胞ペアにおいても一定の割合で共通入力が観察されたが、その割合は神経結合するペアと比べて低かった。以上の結果は、微小神経回路網は機能コラム構造の中に埋め込まれていることを示しており、微小神経回路がコラムの中に構成されている最小の情報処理単位であることが示唆された。
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