研究課題
娘細胞集成体は、単一の神経前駆細胞から分化した神経細胞郡である。視覚野では、これらの細胞群が、微小回路を形成し、その回路が経験などによって最適化されると考えられている。一方、海馬でも同様の生得的回路が形成されるが、その微小回路がどのような機能を持っているかは明らかではない。そこで、本研究では、単一の神経前駆細胞から分化した複数の神経細胞の活動を、蛍光カルシウムセンサータンパク質GCaMPと蛍光タンパク質を発現するレトロウイルスベクターを用いて解析した。受精後12日目の胎児に、レトロウイルスベクターを注入し、発生後2ヶ月齢以降で二光子顕微鏡で観察したところ、海馬CA1領域内に娘細胞集成体が観察された。海馬CA1領域の神経細胞にアデノ随伴ウイルスを用いて蛍光カルシウムセンサータンパク質を発現させ、麻酔下で娘細胞集成体の活動をイメージングした。その結果、標識された娘細胞集成体は他の未標識の細胞に比べて、発火頻度が低いことがわかった。覚醒下での仮想現実空間中での神経細胞の活動を二光子顕微鏡によりイメージングしたところ、麻酔下と同様に娘細胞集成体の活動は他の細胞に比べて低いことが示唆された。さらに、これらの細胞は、他の細胞と同様に同期発火しないことがわかった。今後の展望は、二種類のウイルスを使うことにより発火頻度が低いことが考えられるので、遺伝子改変マウスを用いて娘細胞集成体を標識し、実験を行う予定である。
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