研究課題
アルツハイマー病(AD)の病因因子の一つであるアミロイドβタンパク質(Aβ)は、容易に大きな重合体を形成することから、生きた細胞内でのAβモノマーやオリゴマーの機能を解析することが困難であった。そこで神経細胞内でAβオリゴマーを発現し、その分子動態をAβとGFPの融合タンパク質として生きた細胞内で観察可能な新規モデルマウス(Aβ-GFPマウス)を開発した。本研究ではこのマウスを利用して、シナプス内部のAβオリゴマーの機能の詳細を解析し、重合状態と毒性の関連を明らかにすることを目的とした。まず、Aβ-GFP融合タンパク質の分子状態を、NMR・電子顕微鏡・蛍光相関分光分析法・免疫組織化学法を用いてより詳細に解析した結果、この融合タンパク質は生体内外において、主に2量体から7量体のオリゴマーを形成することを明らかにした。そこで、この融合タンパク質を発現させたマウスを行動学的、生化学的、電気生理学的に解析した。行動学的解析の結果、3ヶ月齢前後の若い個体で既に空間認知機能障害や記憶障害が起こり、また電気生理学的解析では長期増強(LTP)が野生型に比べ優位に低下していることが明らかとなった。更に、シナプスの前部と後部で、シナプス伝達に関連する主要なタンパク質の発現を、海馬組織のP2画分を用いて比較した結果、シナプス後部のタンパク質のうちNMDA受容体関連タンパク質の発現が低下していることが明らかとなった。これらの結果は、Aβ-GFPマウスがAβオリゴマーによるシナプス障害を解析する有効なモデルであることを示唆している。また、このモデルマウスを用いてシナプス領域の様々な変化を解析することは、ADの発症を予防する方法の開発に繋がると思われる。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 22712
10.1038/srep22712.
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2016/pr20160316_2/pr20160316_2.html