研究課題/領域番号 |
26640029
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高橋 均 新潟大学, 脳研究所, 教授 (90206839)
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研究分担者 |
豊島 靖子 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (20334675)
他田 真理 新潟大学, 脳研究所, 助教 (30646394)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 筋萎縮性側索硬化症 / TDP-43 / 病型分類 / 免疫組織化学 |
研究実績の概要 |
目的:ALS の大脳皮質においてリン酸化TDP-43(pTDP-43)陽性組織像の詳細な検討はなされておらず、これを解析し臨床像との関連を検討した。 方法:孤発性ALS連続剖検例128例から、TDP-43陰性の2例と検索困難な15例を除き111例を対象とした。Nishihiraら(2008) のALS分類に従い、海馬歯状回にpTDP-43陽性神経細胞質内封入体(NCI)を欠くType 1(78例)とそれを有するType 2(33例)に分類した。Type 2について、側頭葉皮質におけるpTDP-43陽性の変性神経突起(DN)の出現に注目して分類し、臨床像や組織像、生化学的特性との関連を検討した。 結果:Type 2の33例のうち22例では、DNは少数であり(scarce DN: DN-S群)、他の11例では多数のDNに加えthreadsなど多彩な陽性所見が認められた(abundant DN: DN-S群)。両群ともNCIが種々の程度に認められた。DN-A群はDN-S群に比し罹病期間が有意に短かった。組織学的には、DN-A群では下位運動ニューロン脱落は軽度で、レンズ核に顆粒状のpTDP-43陽性像が高率に認められた。生化学的解析では、断片型pTDP-43の出現様式に両群間で明らかな相違は認められなかった。 結論:ALSの大脳皮質ではpTDP-43陽性組織像は多彩であり、NCIとDNの出現量は症例ごとに異なっていた。DNの多寡で症例を分類すると、臨床的、組織学的な相違が認められた。DN-A群では下位運動ニューロン脱落が軽度であるにも拘らず、早期に死に至っていた。この群では、神経細胞死以前に機能障害をきたしている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに研究は進展し、筋萎縮性側索硬化症のTDP-43皮質組織像の多様性と臨床病理および生化学的解析結果との関連を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
ALSの大脳皮質についてさらに詳細な検討を行う。TDP-43病理像としてpTDP-43陽性神経細胞質内封入体(NCI)に加え、pTDP-43陽性グリア細胞質内封入体(GCI)の存在が知られているが、それらの出現の相互の関連性についてはこれまで何ら検討されていない。そこで、in situ hybridizationと免疫組織化学の2重標識法を用いて、ALS大脳皮質におけるpTDP-43陽性封入体を有している神経細胞およびグリア細胞の数を定量的に評価し、Nishihiraら(2008) のALS分類(Type 1 & Type 2)における大脳皮質のリン酸化TDP-43陽性組織像の形成にNCIとGCIがどのように関与しているのかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に推移したが、消耗品の使用が予定より少なかった。また、謝金は発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に節約できた研究費は、今後、予定より増加が見込まれる消耗品、旅費、謝金等に使用する予定である。
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