研究課題
昨年に引き続き、リン酸化TDP-43 (pTDP-43)病理に準拠した「ALSからみたALSのための病型分類」の提唱に至る研究を遂行した。そこでは、対象ALS剖検例の厳選(pTDP-43陰性例、検索困難な例、さらに大脳皮質や基底核に病変を有する例の除外)、さらに検索部位、検索方法の改善、追加を行った。目的:筋萎縮性側索硬化症(ALS)の大脳皮質及び皮質下灰白質(淡蒼球と被殻)におけるリン酸化TDP-43 (pTDP-43)陽性組織像の詳細な検討を行い、臨床像との関連を統計学的に解析した。方法:孤発性ALS連続剖検例(96例)を対象とした。Nishihiraら(2008)のALS分類に従い、海馬歯状回にpTDP-43陽性神経細胞質内封入体(NCIs)を認めないALS-classical (ALS-C:63例)とそれを認めるALA with temporal lesion(ALS-T:33例)に分類した。ALS-T例においては、側頭葉新皮質におけるpTDP-43陽性の神経突起(dystrophic neurites: DNs)の出現について、ALS-T/few DNsおよびALS-T/many DNsの2つ分類可能であった。これら3群について、臨床病理学的解析を行った。結果:臨床的には、ALS-Cでは認知症の合併は極めてまれであった。また、ALS-T/many DNsは他の2群に比し生命予後が不良であった。一方、組織学的にはALS-T/many DNs群では下位運動ニューロンの脱落が軽く、大脳皮質と同様に淡蒼球と被殻にも無数の顆粒状や点状のpTDP-43陽性構造を高率に認めた。免疫蛍光二重染色による検討では、これらは神経樹状突起棘への蓄積であると考えられた。結論:各群の罹病期間や運動ニューロン脱落の程度を考慮すると、疾患の進行に伴いALS-CからALS-T/few DNsへ、あるいはALS-T/few DNsからAS-T/many DNsへの移行は考え難く、むしろ、これら3群はpTDP-43の脳内および細胞内局在が異なる独立した亜群であるとみなされた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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