研究課題
本研究計画担当者は、αシヌクレイン(Syn)の重合開始メカニズムを解明することにより、 パーキンソン病の病態解明及び治療法の開発に結びつくと考え、本計画を提案した。 具体的には、αSynが生理的条件下で四量体を形成するとの最近の報告(Selkoeら2011, 2013)に基づき、この四量体の立体構造を特異的に認識する抗体を作製して、個体または培養細胞でのαSynの動態を追跡するというものである。本研究計画担当者の所属する研究室では赤血球にαSynが豊富に存在することを以前に報告しているが(2007)、四量体Synを抗原として安定した態様で取得するノウハウについては保有しておらず、まずこの条件検討を行った。安定した四量体を構成させるために、架橋剤Disuccinimidyl glutarate (DSG)を赤血球サンプルに混合して調整し、ウエスタンブロットで検出する条件を検討した。 赤血球サンプルの他、ドーパミン神経で野生型または変異型のヒトαまたはβSynを単独でまたは共発現する頭部サンプルについても検討を行った。Synの検出にはヒト、マウスの各αSynに反応するDB社の抗αSyn抗体(Syn-1)の他、前記先行論文で使用された15G7抗体、抗リン酸化αSyn抗体(#64)、重合したSynのみを検出する5G4抗体、 ネガティブコントロールとして抗βSyn抗体(BD社)を使用した。ショウジョウバエ個体を用いた解析の過程では、変異型βSynを野生型αSynと共発現させると、野生型βSynを共発現させたときに比べて有意 にドーパミンレベルが減少するとともに、ウエスタンブロット解析でαSynが界面活性剤可溶画分に移行することを明らかにした。この知見はαSynの重合開始メカニズムの解明に重要な手がかりを提供するものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
計画どおり架橋剤としてDSGを採用した四量体の構成条件の検討を進め、ウエスタンブロットでの検出解析を上記複数の種類の抗体を使用して繰り返し行った。さらにこの過程でSynの重合開始メカニズムに重要な手がかりをもたらすと考えられる具体的成果を出し、学会報告も行った。
ウエスタンブロットで四量体を単に検出する段階に比べて、抗原として利用可能なピュリティと安定な四量体の構成維持を両立するタンパクを単離取得する段階の難易度は極めて高いが、最近Selkoeらにより報告された凍結脳サンプルからのSyn単離法(2015)も参考にして安定な抗原タンパクを調製し、計画どおり抗体作製段階へと移行する。
抗原タンパクを調製するまでのステップと抗体作製ステップとでは後者により多くの資金が必要であるところ、研究計画では逆に前半に多くの資金を見積もってしまったことによる。
今後移行する抗体作製ステップで計画通り使用する。
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Biomolecules
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http://www.igakuken.or.jp/parkinson/