研究実績の概要 |
本研究計画者は家族性パーキンソン病の原因遺伝子の一つであるαシヌクレイン (Syn)及びその非アミロイドホモログであるβSynについて、従来考えられていた単量体ではなく、通常四量体として存在するとの報告(Bartelsら2011, Dettmerら2013)に注目し、その特異抗体を作製してαSynの重合開始メカニズムの解明に役立てようと考えた。しかしながら分離ゲル上で四量体タンパクを識別することはできても、立体構造を維持しつつ抗原タンパクとして精製するのは困難であり、四量体のSynは精製最終段階で単量体となることもその後報告された(Luthら 2014)。このことから、当初の計画を一部見直して、抗原タンパクをゲルの切り出しにより行うことが有効ではないかと考え、その検出抗体として抗αSyn 15G7抗体を中心に、抗リン酸化αSyn #64抗体及び抗重合αSyn 5G4抗体を使用して検討を進めている。 一方、申請者は血液サンプルの他、野生型及び変異型のヒトα及びβSyn(αSyn wild, αSyn A53T, βSyn wild, βSyn P123H, βSyn V70M)を染色体上の同じ箇所に導入したトランスジェニックフライ(tg fly)を独自に作製し、保有している。このtg flyを用いた遺伝子解析の結果、四量体を形成しにくいことが報告されているαSyn A53T(Dettmerら2015)において顕著に減少する膜結合型タンパク遺伝子を見出した。四量体を形成しないαSyn A53T遺伝子産物が神経変性の開始を誘導するメカニズムに繋がるものと考え、学会報告した(日本分子生物学会2015)。この過程でBrain Behav. Immun.誌に原著論文を共同著者として、npj.Microgravity誌及びJ Alz. Dis.誌にそれぞれ総説論文を報告した。
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