研究課題/領域番号 |
26640034
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
服部 頼都 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (60713849)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | SIRT1 / 脳低還流 / 脳虚血 / 内皮型一酸化窒素合成酵素 / 脱アセチル化 |
研究実績の概要 |
平成26年度において、野生型(WT)とSIRT1過剰発現(Sirt1-Tg)マウスに両側総頸動脈狭窄(BCAS)手術を行い、個体レベルで脳血流量変化、脳病理組織、行動変化などを比較検討した。Sirt1-Tgマウスで、BCAS後にWTマウスより脳虚血傷害は軽減し認知機能障害は軽度であった。これはSirt1-Tgマウスで脳血流量が術後も維持されていたためであった。血管反応性は、Sirt1-Tgマウスで内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)アゴニストのアセチルコリン脳表還流で脳血流量・脳表動脈径の増大を認め、eNOSがSirt1-Tgマウスで活性化しやすいことが判明した。また、WTとSirt1-Tgマウスに10分間の両側総頸動脈閉塞を行った。Sirt1-Tgマウスは閉塞中においてもWTマウスより脳血流低下が抑制されており、術後の海馬の神経細胞死もSirt1-Tgマウスで軽減していた。 平成27年度に行う予定であった、SIRT1-inhibitorの投与実験、eNOS-inhibitorの投与実験、虚血組織での分子発現の解析も行った。Sirt1-TgマウスにSIRT1-inhibitorをBCAS直前に投与すると、BCAS2時間後の脳血流量はWTマウスと同様の脳血流量まで低下し、eNOS-inhibitorを投与してもBCAS術後の脳血流量はWTマウスと同様の脳血流量であったことから、Sirt1-Tgマウスで脳血流量が維持される理由は、SIRT1によってeNOSが活性化されるためと考えた。そこで、BCAS術前、手術2時間後の脳を採取して、ウエスタンブロット法で確認したところ、Sirt1-Tgマウスでは術後2時間で非アセチル化eNOSが増大していた。以上より、BCAS後にSIRT1がeNOSを脱アセチル化して活性化することで脳血流量が維持されたと考えた。以上の結果は、Stroke.2014;45;11:3403-3411と NeuroReport.2015;26;3:113-117で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
それぞれの実験において、失敗が少なかったことが当初の計画以上に進展したことの大きな理由と考える。BCAS手術、組織評価、行動評価、血管反応性の評価など、in vivo実験について、平成26年度までに習熟していたため、当研究を早く軌道に乗せることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に記載のとおり、今年度中に狭窄率>50%(NASCET法)の無症候性総頚動脈または内頚動脈狭窄症の患者にSIRT1活性化剤を約半年間投与し、投与前後に脳血流SPECTとFMD (Flow Mediated Dilation)検査、神経心理検査などを行い、脳血流量、脳循環予備能、血管内皮依存性血管拡張能、認知機能の比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画が予想されたものより早く進み、消耗品の消費が予想より少なく、また、実験補助の人件費を必要としなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、SIRT1活性化剤の臨床試験の開始を行う予定としているため、データ整理を行う補佐員が必要と考えており、人件費の消費が追加されると予想される。
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