研究実績の概要 |
平成27年度においては,SIRT1活性化剤の開発と無症候性頸動脈狭窄症患者へのSIRT1の効果を確認することを最終目標とした.前年度に使用した,総頸動脈狭窄症による血管性認知症モデルマウス(BCAS: Bilateral common Carotid Artery Stenosis)は,実臨床の頸動脈狭窄症を忠実に再現できてはなかったため,今年度は,まず,ヒトの頸動脈狭窄症を忠実に再現しうるモデルマウスを作製し,このモデルにおいてもSIRT1の効果を確認することとした.℃57BL/6J雄性マウスの両側総頸動脈に内径0.75mmのアメロイドコンストリクターを装着すると,1か月後に総頸動脈の内膜に平滑筋の遊走とマクロファージの浸潤を伴った内膜肥厚が惹起され,動脈硬化性変化を示した中等度以上の総頸動脈狭窄症を再現することに成功した(Hattori et al., J Am Heart Assoc 2016).現在,SIRT1過剰発現マウスにこのモデルを導入し,SIRT1の効果を確認している. 並行して,某製薬企業にてSIRT1活性化剤が開発中であり,院内においても,倫理委員会への議題提出,放射線科とSIRT1活性化剤投与前後における脳SPECTの関心領域の設定方法についての議論,神経心理検査の訓練,薬剤部とSIRT1活性化剤の実薬・偽薬の管理・投与方法の打ち合わせなどを進めており,上記の基礎研究が終了次第,可及的速やかに臨床研究に進めるべく鋭意努力中である.
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