研究課題
孤発性ALSの緩徐進行性の運動ニューロン死には、RNA編集活性低下に依る未編集型GluA2をサブユニットに持つ異常なCa2+透過性AMPA受容体の発現が深く関与している。従って、AMPA受容体のCa2+透過性を正常化することが孤発性ALSの治療法開発に繋がると考えられ、未編集型GluA2をサブユニットに持つCa2+透過性AMPA受容体を特異的にブロックする安定なRNA aptamerをモデルマウスに投与することにより、孤発性ALSの特異的治療法開発を目指す。RNA aptamerの特異性は連携研究者のNiu教授の研究室で行い、至適局所濃度の情報を得た。マウス脳室内にRNA aptamerを投与するための予備実験を行った。頭蓋骨に留置カニューラを固定し、ミクロダイアリシスチューブで繋いだaptamerを充填したミニ浸透圧ポンプから駆出する方法を採る。カニューラを脳室内に留置するために、頭蓋骨へ固定する手術方法を開発し、ポンプ、チューブ、カニューラの内腔へのRNA aptamerの吸着を防ぐ方法の検討を行った。RNA aptamer溶解液中に、tRNAを加えることによる効果を評価し、カニューラから駆出されてくる溶液中のRNA aptamer含有量の測定から、tRNAの至適用量、aptamerの安定な時間が、それぞれ125ng/μl、48時間であることを確認した。脳室内投与により、脳幹・脊髄の運動ニューロンに有効量のRNA aptamerを送達するための至適投与速度を0.05%トルイジンブルー含有人工脳脊髄液の投与実験により検討し、2-8 μl/hの速度が至適であることを確認した。以上の予備実験に基づき、コンディショナルADAR2ノックアウトマウス(AR2)への投与により、Ca2+透過性AMPA受容体のブロックによる運動ニューロンへの過剰なCa2+流入の抑制効果を検討する。
3: やや遅れている
担当のポスドクが年度途中で退職したことにより、新たに担当になったポスドクが脳定位手術に習熟する時間が必要であった。また、研究協力者の米国Niu教授よりのRNA aptamerの送付が送れたことで、RNA aptamerのモデル動物への投与が次年度にずれ込んだ。
1)モデルマウス脳室内へのRNA aptamerの注入実験を行う。2)AMPA受容体からのカルシウム流入阻止効果を、投与1-2週間投与後にTDP-43の細胞内局在を免疫組織化学で評価する。3)有効性が見られたときには、至適用量設定のために、高用量、低用量を投与して同様の検討を行う。4) さらに、運動ニューロン死抑制効果を確認するために、4-6週間投与し、運動機能、前角細胞数、前根軸索数を測定する。5)研究協力者であるNiu 教授の教室では、新規の低分子RNA aptamer を開発しており、力価の高いRNA aptamerが得られたときには順次適用する。
消耗品の使用の細かい金額の端数となった。
今年度と合わせて消耗品費として使用する。
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