孤発性ALSの緩徐進行性の運動ニューロン死には、RNA編集活性低下に依る未編集型GluA2をサブユニットに持つ異常なCa2+透過性AMPA受容体の発現が深く関与していることから、AMPA受容体のCa2+透過性を正常化することによるALSの治療法開発を目的とする。本研究ではCa2+透過性AMPA受容体を特異的にブロックする安定なRNA aptamerの治療薬としての可能性を探る。 特異的RNA aptamerは連携研究者のNiu教授より供与された。 1)安定性、髄注による広がりを検討するため、RNA aptamerを32Pで標識し、昨年度確立した方法により留置したカニューラからマウス脳室内に投与した。3日間の持続投与の後に脳脊髄組織のオートラジオグラフィー、シンチレーションカウンターによるRNA aptamerの局所濃度定量、ノーザンブロットによるRNA aptamerの安定性の確認を行った。その結果、RNA aptamerは脳脊髄内へ安定に浸透することが明らかになった。 2)RNA aptamerの生体内での有効局所濃度を明らかにするために、ADAR2flox/floxマウスを用い、未編集型GluA2を含むAMPA受容体のCa2+流入をブロックするために必要な濃度を検討した。大脳皮質にカルシウム色素およびCreリコンビナーゼを遺伝子導入し、皮質ニューロンのAMPA受容体特異的カルシウムシグナルを顕微鏡下に観察した。その結果、今回のRNA aptamerは0.01microMで有効であると想定された。 3)1)2)の結果を基に、有効局所濃度がえられる濃度のRNA aptamerを小型ポンプに充填し、留置カニューラを介してALSのモデルマウスであるAR2マウス脳室内にRNA aptamerを長期投与することでALS治療薬としての有用性を検討する実験を開始した。
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