研究課題
本研究は、網膜をモデルとして哺乳類中枢神経系の発生メカニズムに関して、RNAが果たす機能的役割の解明を目指している。蛋白質をコードしない非コードRNAの一種であるpiRNA(Piwi-interacting RNA)は2006年に発見された新しい小分子非コードRNAであり、トランスポゾンRNAの切断にとって重要である。通常piRNAは生殖細胞に発現しているが、研究代表者は海馬や網膜アマクリン細胞などの中枢神経系組織で発現するpiRNAを見出した。哺乳類神経細胞においてpiRNAがどのような生理現象に関与しているかを明らかにするとともに、中枢神経系で高発現する新規小分子RNAを新たに同定することを目的とする。1)piRNAクラスターコード遺伝子の機能解明 研究代表者が同定したpiRNAは網膜介在神経細胞であるアマクリン細胞に高く発現している。生体エレクトロポレーション法を用いて、同定したpiRNAを発現するベクターを発生途上のマウス網膜に導入した。網膜神経細胞の形態変化を観察したが、強制発現による有意な変化は観察されなかった。2)中枢神経系で発現する新規小分子RNAの同定 マウス海馬、大脳皮質、網膜から全RNAを単離し、その中から小分子RNAの発現解析を行った。領域特異的なmiRNAをはじめとする小分子RNAを多数同定した。3)網膜視細胞発生と機能維持における遺伝子発現制御機構 網膜発生メカニズムの解明を目指してたんぱく質をコードするRNAについても解析を行い、Raxが網膜視細胞の発生と機能維持における遺伝子発現制御に重要な機能を果たすことを明らかにし、論文として報告した。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Mol Cell Biol.
巻: 35 ページ: 2583-96
10.1128/MCB.00048-15