研究課題/領域番号 |
26640054
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
小笠原 一誠 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20169163)
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研究分担者 |
中村 紳一朗 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 准教授 (50307980)
伊藤 靖 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (90324566)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 内膜症サル / LAP陽性単球 / NK細胞 / 体外循環 / 免疫抑制 |
研究実績の概要 |
霊長類のみが卵管の腹腔端開存のため子宮内膜症を自然発症する。当初、我々は4頭の内膜症を自然発症したカニクイザルを同定していたが、現在はさらに8頭の内膜症の初期病変を有するカニクイザルを腹腔鏡にて同定している。また、Foxp3陽性調節性T細胞(Treg)に注目して解析していたが、末梢血の解析結果からLAP陽性単球の増減が内膜症に相関することが明らかとなった。末梢血の解析からは、Tregと内膜症との相関は明らかにならなかった。 LAPは抑制性の液性因子であるTGF-betaを包み、細胞膜表面でTGF-betaを保持する分子である。LAPを有する細胞は抑制的に作用すると推測される。初期内膜症のカニクイザルはLAP陽性単球の比率が高く、NK細胞の比率が低かった。逆に、進行した内膜症のカニクイザルではLAP陽性単球の比率が低く、NK細胞の比率高かった。この結果から、内膜症の成立にはLAP陽性単球が深く関与すると考えられた。また、内膜症組織においては、CD163陽性のM2マクロファージが増加していることを確認している。現在、LAP陽性単球が刺激により抑制性のマクロファージに変化するかどうかを検討している。 我々の開発したTreg除去カラムはLAP陽性単球も除去できることが判明しているので、初期内膜症カニクイザルで体外循環を行い、腹腔鏡で異所性内膜組織の変化を検討した。我々の作成したカラムで3回体外循環を行った結果、明らかな異所性内膜組織の縮小が認められた。また、末梢血の解析ではLAP陽性単球のみが明らかな減少を示していた。以上は1頭の初期内膜症カニクイザルでの結果であり、27年度は頭数を増やしてカラムによる治療実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
内膜症カニクイザルを8頭新たに同定でき、貴重な実験材料を予想外に確保できた。また、体外循環用のカラムを使用した治療実験は27年度を予定していたが、26年度に1頭の内膜症カニクイザルで治療実験を行うことがでた。その結果、ほぼ異所性内膜組織を除去できることが明らかになった。これまで内膜症に有効な治療方法は外科的切除以外になかったことから、新たな治療法の開発につながると期待される。以上の可能性を1年目から得られたことは、当初の計画をはるかに超えた進展と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
カラムで体外循環治療する内膜症サルの頭数を増やすし、カラムの効果を確認する。また、LAP陽性単球細胞の内膜症における明確な役割を解析する。免疫組織学的な検索およびカラム治療前後の組織のDNAアレイを行い、異所性内膜組織の除去に関与する因子の解析も行う。さらに、当初計画には入っていないが、内膜症患者の末梢血でのLAP陽性単球の比率も検討する。
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