前年度に引き続き、特に継代数の少ないB6-129 F1マウス由来のKY1.1野生型ES細胞を選別して、あるいはDTrap法で作製したES細胞クローン(gamma-E-crystallin遺伝子 - 眼球のレンズで特異的に発現 - とperilipin-1遺伝子 - 脂肪細胞で特異的に発現 - がトラップされたもの)を用いて、テトラプロイド胚のコンプリメンテーションを試みた。しかしながら、いずれの場合もマウスが胎生後期まで発生しなかった。 本研究の後半では、両アレル遺伝子破壊ES細胞株(ハプロイドES細胞由来)の共注入による細胞系譜のレスキューを試みるため、平成28年度にも、ハプロイドES細胞株を利用してランダムなポリAトラップを行い、ベクターが細胞あたり1コピーで挿入されたハプロイドES細胞株のみを迅速に選別した。ハプロイドES細胞株には、時間経過とともに自然にディプロイド化する、という性質があるため、当初は細胞あたり1コピーであったベクターが、ディプロイド化にともない、細胞あたり2コピーになる。その状態で一過性にCreを発現させた場合、一部の細胞では確率的に片方のNEO-PUROカセットのみが反転し、そのよう細胞は、G418とpuromycinの両者に耐性を示すようになる。このようにして、前年度までに用意したクローンに加え、さらに多数の両アレル遺伝子破壊ES細胞株を樹立し、定法にしたがい、トラップされた遺伝子を判別した。この両アレル遺伝子破壊のステップは、大阪大学医学部・竹田潤二博士との共同研究によって遂行した。
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