研究課題/領域番号 |
26640061
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
松井 秀彰 宮崎大学, 医学部, 助教 (60710853)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アフリカメダカ |
研究実績の概要 |
Nothobranchius furzeriのドパミン神経およびノルアドレナリン神経の解剖図譜を、anti-Tyrosine Hydroxylase抗体を用いて作製することに成功した。その結果、ドパミン神経およびノルアドレナリン神経の分布は、申請者がこれまで解析してきたメダカやゼブラフィッシュと同様であった。老化による神経変性の影響を検討するために、1ヶ月齢および3ヶ月齢においてドパミン神経およびノルアドレナリン神経の細胞数をカウントした。1ヶ月齢の成魚では青斑核に平均22個のノルアドレナリン神経を認めた。驚くべきことに加齢以外に特別な負荷をかけなかったにもかかわらず、3ヶ月齢でノルアドレナリン神経が著明に減少し、5ヶ月齢ではほぼ消失していた。ドパミン神経の変性は時間的に、ノルアドレナリン神経より後期であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
想定通り加齢による神経変性が確認できた点は大きい。また飼育方法を樹立した点も今後につながる。
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今後の研究の推進方策 |
このような加齢のみによる著明な神経変性を来すモデル動物は、申請者の知る限り報告はなく、マウスや類似の小型魚類であるゼブラフィッシュ、メダカでも観察されない。初年度は引き続き本解析を継続するとともに、in situ hybridizationを用いてドパミン神経とノルアドレナリン神経の解剖図譜をさらに詳細なものとする。またノルアドレナリンやドパミンの減少を生化学的にも定量する 特にノルアドレナリン神経の変性が、ドパミン神経の変性よりも顕著であることは注目に値する。というのは実際のヒトパーキンソン病においても、末梢交感神経などから、青斑核、黒質、大脳と病変が連続的に末梢から進行するというBraak仮説が有力なものとして提唱されており、Nothobranchius furzeriの加齢依存性神経変性もそれと類似するからである。末梢病変の検索を進めながら、かつαシヌクレインおよびユビキチンを免疫染色し、凝集体の存在を検索する。またその凝集体の進展を齢を追って解析し、Braak仮説が脊椎動物一般に受け入れられる説であるかどうかを検証する。薬物負荷や遺伝子操作は、その投与経路や操作方法により、必然病変好発部位が存在し、Braak仮説の検証には適さないことがある。これは特に薬物負荷や遺伝子操作を行っていない、加齢だけが負荷因子の本モデルでは容易な検証である。 また、並行してNothobranchius furzeriのより簡易な継代方法を開発する。古典的にはピートに産卵させるが、ピート内の卵は検卵する手間が大変であり、またいくつか休眠状態に入ってしまうため、せっかくの本モデルのスピードを十分に活かすことができない。申請者はすでに、砂へ産卵したものを同日中にシャーレに0.3%食塩水をいれて28℃で保持すると、休眠に入る個体数が少ない事を見いだした。その飼育方法をさらに最適化し、休眠のない、迅速な老化疾患研究に適したモデル動物へと試行を繰り返す。
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次年度使用額が生じた理由 |
まとめ買いなどにより、わずかに消耗品費が押さえられた。また中古機器の購入で機器代金も押さえたため。
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次年度使用額の使用計画 |
アフリカメダカの飼育費、および切片解析と生化学解析に使用する。
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